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August 3, 2023 Vol. 389 No. 5

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急性疼痛に対する VX-548 による NaV1.8 の選択的阻害
Selective Inhibition of NaV1.8 with VX-548 for Acute Pain

J. Jones and Others

背景

電位依存性ナトリウムチャネル NaV1.8 は,末梢の侵害受容ニューロンに発現するもので,侵害受容シグナル伝達に役割を果たしている.選択性の高い経口 NaV1.8 阻害薬 VX-548 の急性疼痛抑制効果が研究されている.

方 法

VX-548 の NaV1.8 阻害選択性を in vitro で確認し,その後,腹部形成術後に急性疼痛が出現した患者と,バニオン切除術後に急性疼痛が出現した患者を対象とする 2 件の第 2 相試験を行った.腹部形成術試験では,参加者を,VX-548 100 mg を経口負荷投与後,50 mg を 12 時間ごとに維持投与する群(高用量群),VX-548 60 mg を負荷投与後,30 mg を 12 時間ごとに維持投与する群(中用量群),酒石酸水素ヒドロコドン(hydrocodone bitartrate;5 mg)+アセトアミノフェン(325 mg)を 6 時間ごとに経口投与する群,プラセボを 6 時間ごとに経口投与する群に 1:1:1:1 の割合で無作為に割り付け,48 時間投与した.バニオン切除術試験では,参加者を,VX-548 を高用量で経口投与する群,中用量で経口投与する群,低用量で経口投与(20 mg を負荷投与後,10 mg を 12 時間ごとに維持投与)する群,酒石酸水素ヒドロコドン(5 mg)+アセトアミノフェン(325 mg)を 6 時間ごとに経口投与する群,プラセボを 6 時間ごとに経口投与する群に 2:2:1:2:2 の割合で無作為に割り付け,48 時間投与した.主要エンドポイントは,48 時間における時間加重した疼痛強度差の総和(SPID48)とした.これは,VX-548 またはプラセボの初回投与後 19 回のタイムポイントにおける疼痛数値評価尺度(NPRS)スコア(0~10 で,数値が高いほど痛みが強いことを示す)から求める指標である.主要解析では,VX-548 の各用量をプラセボと比較した.

結 果

303 例が腹部形成術試験,274 例がバニオン切除術試験に登録された.時間加重した SPID48 における高用量 VX-548 群とプラセボ群との最小二乗平均差は,腹部形成術後で 37.8(95%信頼区間 [CI] 9.2~66.4),バニオン切除術後で 36.8(95% CI 4.6~69.0)であった.いずれの試験でも,VX-548 の投与を低用量または中用量で受けた参加者の結果は,プラセボの投与を受けた参加者と同様であった.VX-548 で頻度の高かった有害事象は,頭痛と便秘であった.

結 論

高用量の VX-548 は,プラセボと比較して,腹部形成術後またはバニオン切除術後 48 時間急性疼痛を軽減させたが,それより低い用量では軽減させなかった.VX-548 は,軽度~中等度の有害事象と関連した.(バーテックス ファーマシューティカルズ社から研究助成を受けた.VX21-548-101 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04977336,VX21-548-102 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT05034952)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 393 - 405. )