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August 17, 2023 Vol. 389 No. 7

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高齢者の認知機能低下の予防を目的とした MIND 食に関する試験
Trial of the MIND Diet for Prevention of Cognitive Decline in Older Persons

L.L. Barnes and Others

背景

観察研究からの知見は,食事パターンが認知機能低下の予防に利益をもたらす可能性を示唆しているが,臨床試験のデータは限られている.「神経変性を遅らせるための地中海–DASH 介入(Mediterranean–DASH Intervention for Neurodegenerative Delay)」は,地中海食と DASH 食(高血圧を防ぐ食事方法)の組合せに,認知症リスクの低下に関連するとされる食物を含めるよう修正されたものであり,「MIND 食」として知られている.

方 法

2 施設で行われた無作為化比較試験で,認知機能の低下は認めないが認知症の家族歴があり,体格指数(体重 [kg]/身長 [m]2)が 25 超で,14 項目の質問票評価で「最適以下」の食事を摂っている高齢者を対象に,軽度のカロリー制限を伴う MIND 食の認知機能への影響を,軽度のカロリー制限を伴う対照食と比較検討した.参加者を,3 年間介入に従う群と,対照食に従う群に 1:1 の割合で割り付けた.全例が,割り付けられた食事の遵守に関するカウンセリングと,減量を促進するための支援を受けた.主要エンドポイントは,全般的な認知スコアと 4 つの認知ドメインスコアのベースラインからの変化量とし,12 の検査のテストバッテリーにより算出した.各検査の素点を z スコアに変換し,全検査で平均を出して全般的認知スコアを作成し,検査別に平均を出して 4 つの認知ドメインスコアを作成した.これらのスコアは,高いほど認知機能が良好であることを示す.副次的エンドポイントは,非無作為抽出サンプルにおける,MRI で測定した脳の特性のベースラインからの変化量とした.

結 果

スクリーニングを受けた 1,929 例のうち 604 例が登録され,301 例が MIND 食群,303 例が対照食群に割り付けられた.参加者の 93.4%が試験を完了した.ベースラインから 3 年目までに,両群の全般的認知機能スコアに改善がみられ,MIND 食群では 0.205 標準単位増加し,対照食群では 0.170 標準単位増加した(差の平均 0.035 標準単位,95%信頼区間 -0.022~0.092,P=0.23).MRI 上の白質高信号域,海馬体積,灰白質・白質体積の総量の変化量は 2 群で同程度であった.

結 論

認知症の家族歴を有する,認知機能の低下を認めない参加者のうち,軽度のカロリー制限を伴う MIND 食に従った人と,軽度のカロリー制限を伴う対照食に従った人とで,ベースラインから 3 年目までの認知機能と脳 MRI 測定値の変化量に,有意差は認められなかった.(米国国立老化研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号:NCT02817074)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 602 - 11. )