March 21, 2024 Vol. 390 No. 12
巨大軸索ニューロパチーに対する髄腔内遺伝子治療
Intrathecal Gene Therapy for Giant Axonal Neuropathy
D.X. Bharucha-Goebel and Others
巨大軸索ニューロパチーは,複数の症状が出現する,常染色体潜性遺伝のまれな小児神経変性疾患である.gigaxonin をコードする遺伝子,GAN の両アレルの機能喪失型変異によって引き起こされる.
巨大軸索ニューロパチーの小児を対象として,scAAV9/JeT-GAN(GAN 導入遺伝子を含む自己相補型アデノ随伴ウイルスを用いた遺伝子治療)の髄腔内用量漸増試験を行った.安全性を主要エンドポイントとした.重要な副次的臨床エンドポイントは,治療後 1 年の時点における 32 項目の運動機能尺度(MFM-32)の総パーセントスコアの変化割合(傾き)が,治療前の傾きより緩徐になる事後確率が 95%以上であることとした.
14 例に,scAAV9/JeT-GAN を次の 4 つの用量のいずれかで髄腔内投与した:3.5×1013 総ベクターゲノム(vg)2 例,1.2×1014 vg 4 例,1.8×1014 vg 5 例,3.5×1014 vg 3 例.中央値 68.7 ヵ月(範囲 8.6~90.5)の観察期間中,重篤な有害事象は 48 件発現し,うち 1 件(発熱)は治療に関連している可能性があった.有害事象全体では,682 件中 129 件が治療に関連している可能性があった.対象集団全体における治療前の傾きの平均は -7.17 パーセントポイント/年(95%信用区間 -8.36~-5.97)であった.治療後 1 年の時点で,傾きの変化の事後平均は,3.5×1013 vg で -0.54 パーセントポイント(95%信用区間 -7.48~6.28),1.2×1014 vg で 3.23 パーセントポイント(95%信用区間 -1.27~7.65),1.8×1014 vg で 5.32 パーセントポイント(95%信用区間 1.07~9.57),3.5×1014 vg で 3.43 パーセントポイント(95%信用区間 -1.89~8.82)であった.傾きが緩徐になる事後確率は,それぞれ 44%(95%信用区間 43~44),92%(95%信用区間 92~93),99%(95%信用区間 99~99),90%(95%信用区間 89~90)であり,1.8×1014 vg での 99%は有効性閾値を超えていた.遺伝子導入後 6~24 ヵ月のあいだに,6 例では,感覚神経活動電位振幅が増加したか,振幅の低下が止まったか,振幅がない状態から記録可能となったが,8 例では振幅がない状態のままであった.
巨大軸索ニューロパチーに対する scAAV9/JeT-GAN による髄腔内遺伝子導入は,有害事象を伴い,一部の用量では,1 年の期間中,運動機能スコアやその他の尺度に利益をもたらす可能性があることを示した.本症に対する AAV を介した髄腔内遺伝子治療の安全性と有効性を明らかにするためには,さらなる研究が必要である.(米国国立神経疾患・脳卒中研究所ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02362438)