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April 25, 2024 Vol. 390 No. 16

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急性心筋梗塞後のエンパグリフロジン
Empagliflozin after Acute Myocardial Infarction

J. Butler and Others

背景

エンパグリフロジンは,心不全患者,心血管リスクが高い 2 型糖尿病患者,慢性腎臓病患者の心血管転帰を改善する.急性心筋梗塞患者におけるエンパグリフロジンの安全性と有効性は明らかにされていない.

方 法

イベント主導型二重盲検無作為化プラセボ対照試験で,急性心筋梗塞で入院中の,心不全リスクを有する患者を,標準治療に加えて,エンパグリフロジン 10 mg を 1 日 1 回投与する群と,プラセボを投与する群に,入院後 14 日以内に 1:1 の割合で割り付けた.主要エンドポイントは,心不全による初回入院または全死因死亡の複合とし,生存時間(time-to-first-event)解析で評価した.

結 果

3,260 例がエンパグリフロジン群,3,262 例がプラセボ群に割り付けられた.中央値で 17.9 ヵ月の追跡期間中,心不全による初回入院または全死因死亡は,エンパグリフロジン群では 267 例(8.2%),プラセボ群では 298 例(9.1%)に発生し,発生率は 100 患者年あたりそれぞれ 5.9 件と 6.6 件であった(ハザード比 0.90,95%信頼区間 [CI] 0.76~1.06,P=0.21).主要エンドポイントの各項目に関しては,心不全による初回入院は,エンパグリフロジン群では 118 例(3.6%),プラセボ群では 153 例(4.7%)に発生し(ハザード比 0.77,95% CI 0.60~0.98),全死因死亡はそれぞれ 169 例(5.2%)と 178 例(5.5%)に発生した(ハザード比 0.96,95% CI 0.78~1.19).有害事象は,エンパグリフロジンの既知の安全性プロファイルと一致し,発現率は 2 群で同程度であった.

結 論

急性心筋梗塞後の心不全リスクが高い患者において,エンパグリフロジンの投与を行っても,プラセボと比較して,心不全による初回入院または全死因死亡のリスクは有意に低くはならなかった.(ベーリンガーインゲルハイム社,イーライリリー社から研究助成を受けた.EMPACT-MI 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04509674)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2024; 390 : 1455 - 66. )