January 4, 2024 Vol. 390 No. 1
料理に液化石油ガスを使用した場合とバイオマス燃料を使用した場合とによる乳児の重症肺炎
Liquefied Petroleum Gas or Biomass Cooking and Severe Infant Pneumonia
E.D. McCollum and Others
家庭内空気汚染への曝露は重症肺炎の危険因子である.バイオマス料理用レンジを液化石油ガス(LPG)料理用レンジに替えることが,乳児の重症肺炎の発生率に及ぼす影響は明らかでない.
インド,グアテマラ,ペルー,ルワンダで,2018 年 5 月~2021 年 9 月に,年齢 18~34 歳,妊娠 9 週~20 週未満の妊娠女性を対象として無作為化比較試験を行った.女性を,開放型 LPG レンジと燃料を用いて料理をする群(介入群)と,バイオマス燃料による料理を継続する群(対照群)に割り付けた.各群で,割り付けられた料理用レンジの使用遵守をモニターし,女性とその児における微小粒子状物質(空気力学径 2.5 μm 以下の粒子 [PM2.5])への 24 時間個人曝露量を測定した.主要転帰は 4 つ設定し,本稿ではそのうちの 1 つである,生後 1 年間における重症肺炎のデータを示す.重症肺炎は,施設で行ったサーベイランスまたは口頭剖検(死亡した児の介護者への聴取)により同定した.
無作為化された妊娠女性 3,200 人のうち,3,195 人が適格性を維持し,3,061 人の児を出産した(介入群 1,536 人,対照群 1,525 人).介入の実行率が高かったことから,児における PM2.5 への個人曝露量は減少し,曝露量の中央値は介入群 24.2 μg/m3(四分位範囲 17.8~36.4),対照群 66.0 μg/m3(四分位範囲 35.2~132.0)であった.生後 1 年間における重症肺炎のエピソードは 175 件同定され,発生率は介入群 5.67 件/100 人年(95% 信頼区間 [CI] 4.55~7.07),対照群 6.06 件/100 人年(95% CI 4.81~7.62)であった(発生率比 0.96,98.75% CI 0.64~1.44,P=0.81).試験担当医師に介入に関連すると判定された重度の有害事象はなかった.
乳児の重症肺炎の発生率は,LPG レンジで料理する群に割り付けられた母親と,バイオマスレンジでの料理を継続する群に割り付けられた母親とで,有意には異ならなかった.(米国国立衛生研究所,ビル&メリンダ・ゲイツ財団から研究助成を受けた.HAPIN 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02944682)