メディケア受給者における処方薬保険給付補助金の喪失と死亡率
Loss of Subsidized Drug Coverage and Mortality among Medicare Beneficiaries
E.T. Roberts and Others
1,400 万人のメディケア受給者は,「低所得補助金(LIS)」を受給し,メディケアパート D の費用負担が軽減されている.LIS の廃止は,医薬品へのアクセスを妨げ,死亡率に影響を及ぼす可能性がある.
2015~23 年のメディケアデータを用いて,メディケアとメディケイドの両方に適格であり,自動的に LIS を受給している受給者を特定し,メディケイド登録解除と LIS 喪失の年間発生率を算出した.メディケイドの登録が解除された時期と,その後 LIS を喪失した時期との関連から生じる「自然実験」を用いて,LIS 喪失と死亡率との関連を検討した.1 月~6 月にメディケイドの登録が解除され,12 月まで LIS の受給が続いた受給者(受給継続期間 6~11 ヵ月)と,7 月~12 月にメディケイドの登録が解除され,翌年の 12 月まで LIS の受給が続いた受給者(受給継続期間 12~17 ヵ月)とを比較した.2015~17 年にメディケイドの登録が解除された受給者において,登録解除後 7~17 ヵ月の累積死亡率を検討した.登録解除の時期が早いほうが,LIS の喪失が大きかった.
サンプルは,メディケイドの登録が前期(1 月~6 月)に解除された 969,606 人と,後期(7 月~12 月)に解除された 920,158 人であった.メディケイドの登録が前期に解除された受給者では,解除後 17 ヵ月間の累積 LIS 受給期間の平均が 13.6 ヵ月であったのに対し,後期に解除された受給者では 15.3 ヵ月であった.メディケイド登録解除後 17 ヵ月の時点で,累積死亡率は,前期に解除された人(78.3 人/1,000 人)のほうが後期に解除された人(75.3 人/1,000 人)よりも高く,差は 3.0 人/1,000 人(95%信頼区間 [CI] 2.1~3.9)であった.前期に解除された人と後期に解除された人との死亡率の差は,ベースラインのパート D 支出額の最高五分位群の受給者(5.6 人/1,000 人,95% CI 3.3~7.9)や,心血管疾患,慢性肺疾患,ヒト免疫不全ウイルス感染に対する医薬品の使用者で,より大きかった.
低所得のメディケア受給者において,メディケイド登録解除後の処方薬補助金の喪失は,死亡率がより高いことと関連した.(米国国立老化研究所ほかから研究助成を受けた.)