September 11, 2025 Vol. 393 No. 10
閉塞性肥大型心筋症に対するアフィカムテン単剤療法とメトプロロール単剤療法との比較
Aficamten or Metoprolol Monotherapy for Obstructive Hypertrophic Cardiomyopathy
P. Garcia-Pavia and Others
症候性閉塞性肥大型心筋症(HCM)の初期治療は,有効性を示すエビデンスが乏しいにもかかわらず,β遮断薬である.アフィカムテン(aficamten)は,心筋ミオシン阻害薬であり,標準的な薬剤に追加した場合に左室流出路圧較差が減少し,運動耐容能が改善し,HCM の症状が軽減する.単剤療法としてのアフィカムテンが,単剤療法としてのβ遮断薬よりも臨床上大きな利益をもたらすかは明らかでない.
国際共同二重盲検ダブルダミー試験を行い,症候性閉塞性 HCM の成人を,アフィカムテン(1 日 5~20 mg)+プラセボを投与する群と,メトプロロール(1 日 50~200 mg)+プラセボを投与する群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要評価項目は,24 週の時点での最高酸素摂取量の変化量とし,副次的評価項目は,24 週の時点でのニューヨーク心臓協会(NYHA)機能分類の改善と,24 週の時点での,カンザスシティ心筋症質問票・臨床サマリースコア(KCCQ-CSS),バルサルバ手技後の左室流出路圧較差,N 末端プロ B 型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)値,左房容積係数,左室心筋重量係数の変化量とした.
88 例がアフィカムテン群,87 例がメトプロロール群に割り付けられた.平均年齢は 58 歳で,58.3%が男性であり,安静時左室流出路圧較差の平均値は 47 mmHg,バルサルバ手技後の左室流出路圧較差の平均値は 74 mmHg であった.24 週の時点での最高酸素摂取量の変化量は,アフィカムテン群で 1.1 mL/kg 体重/分(95%信頼区間 [CI] 0.5~1.7),メトプロロール群で -1.2 mL/kg/分(95% CI -1.7~-0.8)であった(最小二乗平均の群間差 2.3 mL/kg/分,95% CI 1.5~3.1,P<0.001).アフィカムテンの投与を受けた患者では,NYHA 分類,KCCQ-CSS,左室流出路圧較差,NT-proBNP 値,左房容積係数の改善が,メトプロロールの投与を受けた患者よりも有意に大きかった.左室心筋重量係数に有意差は認められなかった.有害事象の発現率は 2 群で同程度であると思われた.
症候性閉塞性 HCM 患者において,アフィカムテン単剤療法は,最高酸素摂取量と血行動態の改善および症状の軽減に関して,メトプロロール単剤療法に対する優越性を示した.(サイトキネティクス社から研究助成を受けた.MAPLE-HCM 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT05767346)