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May 9, 2002 Vol. 346 No. 19

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無症候性褐色細胞腫における生殖細胞系変異
Germ-Line Mutations in Nonsyndromic Pheochromocytoma

H.P.H. NEUMANN AND OTHERS

背景

褐色細胞腫に対する感受性遺伝子群には,原癌遺伝子 RET(多発性内分泌腫瘍症 2 型 [MEN-2] に関連)や癌抑制遺伝子 VHL(フォンヒッペル-リンドウ病に関連)があるが,最近では,コハク酸脱水素酵素サブユニット D(SDHD)やコハク酸脱水素酵素サブユニット B(SDHB)といった,キャリアにとって褐色細胞腫やグロムス腫瘍の素因を与える新たに同定された遺伝子も含まれるようになっている.われわれは分子生物学的手法を用いて,これら 4 遺伝子のいずれかに変異が存在するか否かについて褐色細胞腫患者の大規模コホートを分類し,遺伝子解析と臨床診療の関連性について検討した.

方 法

血縁関係がなく参加の同意が得られた褐色細胞腫患者から採取した末梢血を用いて RETVHLSDHD および SDHB の変異を検査した.初診時および追跡調査時の臨床データを評価した.

結 果

非症候群性の褐色細胞腫で,家族歴のない患者 271 例中,66 例(24%)で変異があることが明らかとなった(平均年齢 25 歳;男性 32 例,女性 34 例).この 66 例において,30 例は VHL に,13 例は RET に,11 例は SDHD に,12 例は SDHB に変異があった.低年齢,多発性腫瘍および副腎外腫瘍は,変異が存在することと有意に関連していた.しかし,変異のある患者 66 例中 21 例のみが多発性褐色細胞腫を有していた.23 例(35%)は 30 歳以降で症状を呈し,17 例(8%)は 40 歳を過ぎてから症状を呈した.変異をもつ患者の 61 例(92%)は,VHLRETSDHDSDHB の分子生物学的検査によってのみ確認された.これらの患者には初診時に,関連する徴候や症状はみられなかった.

結 論

見掛け上散発性褐色細胞腫と思われる患者の 1/4 近くは,変異キャリアのようである;RETVHLSDHD および SDHB 変異の日常的検査は,他の検査によっては見逃される褐色細胞腫関連症候群を同定する指標となる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2002; 346 : 1459 - 66. )