オランダにおける筋萎縮性側索硬化症患者の安楽死と医師幇助自殺
Euthanasia and Physician-Assisted Suicide among Patients with Amyotrophic Lateral Sclerosis in the Netherlands
J.H. VELDINK, J.H.J. WOKKE, G. VAN DER WAL, J.M.B.V. DE JONG, AND L.H. VAN DEN BERG
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は,呼吸不全にいたる進行性の麻痺を起す疾患である.ALS 患者は医師幇助自殺を考えることがある.しかし,選択権を与えられた場合に,どの程度の数の患者が実際に医師幇助自殺または安楽死によってみずからの生命の終焉を決意するのか,そしてこの疾患のどの段階でそうすることを選択するのかは明らかになっていない.
ALS と診断を受け,1994~99 年に死亡したオランダの患者 279 例の担当医師を同定した.医師に,生命の終焉の決定に関する妥当性が確認された質問票への記入を依頼した.適格な医師 241 人のうち 203 人(84%)が質問票に回答した.
患者 203 例中 35 例(17%)が安楽死を選択し,その方法で死亡した.別の 6 例(3%)は,医師幇助自殺により死亡した.宗教を重要と考えていた患者は,安楽死や医師幇助自殺により死亡した割合が低かった.安楽死や医師幇助自殺の選択は,疾患や患者のケアの個々の特徴とは関連がなく,また,収入や教育水準とも関連がなかった.死亡前の障害は,安楽死により死亡した患者のほうが他の方法で死亡した患者よりも有意に重度であった.医師幇助自殺は,安楽死よりも,疾患のいくらか早い段階で行われる傾向があった.別の 48 例(24%)は緩和療法を受け,この手法は彼らの寿命を短くした可能性が大きい.
われわれは,オランダで,ALS 患者の 5 人に 1 人が安楽死または医師幇助自殺により死亡したことを明らかにした.