January 31, 2002 Vol. 346 No. 5
結腸直腸腫瘍患者からの糞便 DNA における APC 変異の検出
Detection of APC Mutations in Fecal DNA from Patients with Colorectal Tumors
G. TRAVERSO AND OTHERS
結腸直腸腫瘍を検出するための非侵襲的方法は,この疾患の罹患率と死亡率を低下させる可能性がある.結腸直腸腫瘍の引き金となる大腸腺腫様ポリポーシス(APC)遺伝子の変異は,理論的には結腸直腸腫瘍を検出するのに最適なマーカーとなる.われわれの研究の目的は,新たに考案した方法によって糞便 DNA の APC 変異を検出できるか,その可能性を決定することである.
日常検査で採取した糞便検体から DNA を精製し,digital protein truncation 法と称される新規の方法を用いて,APC 変異をスクリーニングした.この方法を用いることにより,多種多様な変異を高感度で特異的に同定できる可能性がある.
非転移性結腸直腸癌患者 28 例,直径 1 cm 以上の腺腫患者 18 例,腫瘍疾患のない対照患者 28 例から採取した糞便検体について検討した.APC 変異は,腫瘍患者 46 例中 26 例で同定され(57%;95%信頼区間,41~71%),対照患者 28 例では 1 例も認められなかった(0%;95%信頼区間,0~12%;p<0.001).検査が陽性患者において,変異 APC 遺伝子は,糞便内全 APC 遺伝子の 0.4~14.1%を占めた.
APC 変異は,比較的早期の結腸直腸腫瘍患者の糞便 DNA において検出できる.この可能性を問う研究は,結腸直腸腫瘍の早期発見につながる新たな方法を示唆している.