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October 24, 2002 Vol. 347 No. 17

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アスピリンと冠動脈バイパス手術による死亡率
Aspirin and Mortality from Coronary Bypass Surgery

D.T. MANGANO

背景

冠動脈バイパス手術後に起る合併症や死亡のリスクを,低下させることが明らかにされている治療法はない.血小板活性化が,アテローム性動脈硬化症患者において損傷の重要な機構を構成していることから,われわれは,アスピリンの早期投与が冠動脈バイパス手術後の生存率を改善できるかどうかを評価した.

方 法

17 ヵ国 70 施設で,冠動脈バイパス手術を受けた患者 5,065 例を前向きに検討し,このうち 5,022 例が術後 48 時間生存した.患者 1 例につき 7,500 項目のデータを収集し,転帰を中央で判定した.主な焦点は,初期のアスピリン投与と致死的・非致死的な転帰との関係を識別することであった.

結 果

入院中,患者 164 例(3.2%)が死亡し,ほかの 812 例(16.0%)が非致死的な心臓,大脳,腎臓,または胃腸の虚血性合併症を起した.血行再建後 48 時間以内にアスピリン投与(最高 650 mg)を受けた患者では,その後の死亡率が 1.3%(2,999 例中 40 例)で,これに対して,この時間内にアスピリン投与を受けなかった患者では 4.0%であった(2,023 例中 81 例,P<0.001).アスピリン療法は,心筋梗塞の発生率が 48%低下(2.8% 対 5.4%,P<0.001),脳卒中の発生率が 50%低下(1.3% 対 2.6%,P=0.01),腎不全の発生率が 74%低下(0.9% 対 3.4%,P<0.001),腸梗塞の発生率が 62%低下(0.3% 対 0.8%,P=0.01)したことと関係していた.多変量解析では,これらの転帰の発生率低下に独立して関連する他の要因や薬物はないこと,およびアスピリン投与により出血,胃炎,感染,または創傷治癒の障害のリスクが増加しなかったことが示された(これらの有害事象に関するオッズ比 0.63;95%信頼区間 0.54~0.74).

結 論

冠動脈バイパス手術後のアスピリン早期投与は安全であり,死亡や,心臓,脳,腎臓および胃腸管などの虚血性合併症のリスク低下と関係している.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2002; 347 : 1309 - 17. )