September 19, 2002 Vol. 347 No. 12
乳癌の危険因子である乳房 X 線撮影像上の密度の遺伝率
Heritability of Mammographic Density, a Risk Factor for Breast Cancer
N.F. BOYD AND OTHERS
乳房 X 線像で広範な高密度の乳腺組織がみられる女性は,高密度像がほとんどあるいはまったくない同年齢の女性におけるリスクの 1.8~6.0 倍の乳癌リスクがある.年齢調整した高密度組織率の変動の 20~30%が,閉経状態,体重および出産歴で説明される.
計測されない相加的遺伝因子によって説明できる,乳房 X 線撮影像で測定した高乳腺密度の割合における残差変動の比率(遺伝率)を決定するために,双生児を対象とした 2 つの研究を行った.一卵性双生児計 353 組と二卵性双生児計 246 組をオーストラリア双生児登録から募集し,さらに,一卵性双生児 218 組と二卵性双生児 134 組をカナダと米国で募集した.乳房密度の規定要因と考えられる情報は質問票によって得た.乳房 X 線像は,デジタル化し,無作為に並べ替え,1 人の研究者が盲検的に読影した.
年齢および調査した共変量で補正すると,高密度組織率に関する相関係数は,オーストラリアの一卵性双生児組では 0.61,北米の一卵性双生児組では 0.67,オーストラリアの二卵性双生児組では 0.25,北米の二卵性双生児の組では 0.27 であった.古典的な双生児モデルに従うと,遺伝率(相加的遺伝因子に起因しうる変動の割合)は,オーストラリアの双生児では密度変動の 60%(95%信頼区間 54~66),北米の双生児では 67%(95%信頼区間 59~75),調査した全双生児では 63%を占めた(95%信頼区間 59~67).
これらの結果は,特定の年齢における乳房 X 線撮影像の高密度組織率に関する集団での変動が,高い遺伝率をもつことを示している.乳房 X 線撮影像上の乳腺密度は乳癌リスクの増加と関連していることから,乳癌の原因を理解するうえで,この表現型の原因遺伝子を発見することが重要であろう.