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January 1, 2004 Vol. 350 No. 1

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アラキドン酸 5-リポキシゲナーゼプロモーターの遺伝子型,食事由来のアラキドン酸,および粥状硬化症
Arachidonate 5-Lipoxygenase Promoter Genotype, Dietary Arachidonic Acid, and Atherosclerosis

J.H. Dwyer and Others

背景

ロイコトリエンは,5-リポキシゲナーゼ酵素によりアラキドン酸(n–6 系多価不飽和脂肪酸)から生成される炎症メディエーターである.粥状硬化には動脈の炎症が関与することから,5-リポキシゲナーゼ遺伝子のプロモーターの多型性がヒトの粥状硬化に関連しており,その影響は,競合する 5-リポキシゲナーゼの基質の食事からの摂取と相互作用する可能性があるという仮説を立てた.

方 法

ロサンゼルス粥状硬化症研究(Los Angeles Atherosclerosis Study)から無作為に抽出した健康な中年男女 470 例のコホートについて,5-リポキシゲナーゼの遺伝子型,頸動脈内膜–中膜厚,および炎症マーカーを決定した.24 時間思い出し法による食物摂取調査を 6 回行って,食事由来のアラキドン酸と魚介類由来の n–3 系脂肪酸(炎症性ロイコトリエンの産生を低下させる,競合する 5-リポキシゲナーゼの基質を含んでいる)を測定した.

結 果

コホートの 6.0%で 5-リポキシゲナーゼ遺伝子の変異型(よくみられる対立遺伝子の欠損)が認められた.年齢,性別,身長,人種または民族集団で補正した内膜–中膜厚の平均(±SE)は,2 種類の変異型対立遺伝子の保因者で,よくみられる(野生型)対立遺伝子の保因者と比較して 80±19 μm 増大していた(95%信頼区間 43~116;P<0.001).多変量解析では,2 種類の変異型対立遺伝子の保因者における内膜–中膜厚の増大(62 μm,P<0.001)は,このコホートにおいて,一般的にもっとも強力な心血管危険因子である糖尿病に関連する増大(64 μm,P=0.01)とほぼ同様であった.食事由来アラキドン酸の増加により,遺伝子型により認められた粥状硬化の促進効果が有意に亢進したが,一方,食事からの n–3 系脂肪酸の摂取が増加すると,粥状硬化の促進効果が減弱した.さらに,炎症マーカーである C 反応性蛋白の血漿濃度は,2 種類の変異型対立遺伝子の保因者において,よくみられる対立遺伝子の保因者と比較して 2 倍に増加していた.

結 論

5-リポキシゲナーゼ遺伝子の変異型から,粥状硬化が増進している一群が同定された.さらに,観察された食事と遺伝子の相互作用から,この一群において,粥状硬化症の原因となるロイコトリエンを介した炎症は,食事由来の n–6 系多価不飽和脂肪酸によって促進され,魚介類由来の n–3 系脂肪酸によって抑制されることが示唆される.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2004; 350 : 29 - 37. )