February 5, 2004 Vol. 350 No. 6
発作性夜間血色素尿症の患者における溶血と輸血の必要性に対するエクリズマブの効果
Effect of Eculizumab on Hemolysis and Transfusion Requirements in Patients with Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria
P. Hillmen and Others
発作性夜間血色素尿症(PNH)は,造血幹細胞の PIG-A 遺伝子に体細胞突然変異が起り,その結果補体系の攻撃から細胞を保護する表面蛋白を欠損した血液細胞が産生されることで発症する.われわれは,PNH 患者において,補体終末因子の活性化を阻害するヒト化抗体エクリズマブ(eculizumab)の 臨床的有用性を検討した.
輸血依存性の PNH 患者 11 例に,エクリズマブを週 1 回(600 mg)4 週間,その 1 週間後に 900 mg を 1 回,その後 12 週目まで 900 mg を 2 週に 1 回投与した.試験中,溶血の指標となる臨床所見および血液生化学検査値を評価した.
乳酸脱水素酵素値の平均は,投与前の 3,111 IU/L から,投与中には 594 IU/L に低下した(P=0.002).PNH タイプ III 赤血球が全赤血球に占める割合の平均は,36.7%から 59.2%に上昇した(P=0.005).患者 1 人当りの輸血量は,平均値で 2.1 単位/月から 0.6 単位/月に,中央値で 1.8 単位/月から 0.0 単位/月に減少した(中央値の比較の P=0.003).血色素尿の発生回数は 96%減少し(P<0.001),QOL の評価項目は有意に改善した.
エクリズマブは,PNH 患者において安全で忍容性が高い.終末補体蛋白 C5 に対するこの抗体は,PNH 患者において,血管内溶血と血色素尿の頻度および輸血の必要性を減少させ,QOLをも改善した.