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February 12, 2004 Vol. 350 No. 7

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循環血中の血管新生因子と子癇前症のリスク
Circulating Angiogenic Factors and the Risk of Preeclampsia

R.J. Levine and Others

背景

子癇前症の原因はいまだ不明である.限られたデータからは,循環血中の可溶性 fms 様チロシンキナーゼ 1(sFlt-1)が過剰になることが,発症と関連している可能性が示唆されている.sFlt-1 は胎盤成長因子(PlGF)と血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に結合する.

方 法

健常未産婦を対象としたカルシウムによる子癇前症予防研究(Calcium for Preeclampsia Prevention trial)の中で,コホート内症例対照研究を実施した.子癇前症の女性を 1 人ずつ正常血圧の女性とマッチさせた.合計 120 組の女性が無作為に選ばれた.血管新生因子の血清濃度(総 sFlt-1,遊離 PlGF,遊離 VEGF)を妊娠期間を通して測定した.計 655 例の血清検体が得られた.データは,在胎週数期間内に横断的に分析し,また子癇前症発症までの時間に基づいて分析した.

結 果

正常血圧の対照群では,妊娠の最後の 2 ヵ月間に sFlt-1 濃度が上昇し,PlGF 濃度が低下した.これらの変化は,後に子癇前症を発症した女性において,より早期に生じ,より顕著に認められた.sFlt-1 濃度は,子癇前症発症の約 5 週間前から上昇し始めた.臨床疾患の発症時には,sFlt-1 の平均血清濃度は子癇前症の女性で 4,382 pg/mL であり,胎児の在胎週齢がほぼ等しい対照者では 1,643 pg/mL であった(P<0.001).後に子癇前症をきたした女性の PlGF 濃度は,対照者と比較して妊娠 13~16 週から有意に低値を示した(平均,90 pg/mL 対 142 pg/mL,P=0.01).この差が最大になったのは,子癇前症発症前の数週であり,これと同時に sFlt-1 濃度も上昇した.子癇前症の発症が早かった女性と,子癇前症が在胎週数に比して乳児が小さいことと関連していた女性では,sFlt-1 濃度および遊離 PlGF 濃度の変化が大きかった.

結 論

sFlt-1 濃度の上昇と PlGF 濃度の低下は,後の子癇前症の発症を予測する.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2004; 350 : 672 - 83. )