November 25, 2004 Vol. 351 No. 22
橈骨動脈と伏在静脈を用いた冠動脈バイパスグラフトの無作為比較
A Randomized Comparison of Radial-Artery and Saphenous-Vein Coronary Bypass Grafts
N.D. Desai and Others
この 10 年間,橈骨動脈は,グラフトの攣縮の可能性が懸念されているにもかかわらず,冠動脈バイパス術に頻繁に利用されてきた.グラフトの開存性は,長期生存の重要な予測因子である.そこでわれわれは,患者と血管の選択におけるバイアスについて調整した無作為試験で,橈骨動脈グラフトと伏在静脈グラフトの相対的な開存率を評価することを試みた.
13 ヵ所の施設で 561 例の患者を組み入れた.左内胸動脈を用いて前方循環のバイパスを行った.橈骨動脈グラフトを,下面(右冠動脈)領域または側面(回旋枝)領域のいずれかの主な血管のバイパスに無作為に割付け,伏在静脈グラフトを,反対側の領域(対照)のバイパスに用いた.主要エンドポイントは,術後 8~12 ヵ月に血管造影で判定したグラフトの閉塞とした.
1 年目に,患者 440 例に血管造影を実施した.橈骨動脈グラフトの 8.2%と伏在静脈グラフトの 13.6%で完全閉塞がみられた(P=0.009).グラフトのびまん性狭窄(血管造影上の「ストリングサイン(string sign)」)が認められたのは,橈骨動脈グラフトで 7.0%,伏在静脈グラフトではわずか 0.9%であった(P=0.001).本来の血管に重度の狭窄がないことは,橈骨動脈グラフトの閉塞やグラフトのびまん性狭窄のリスク上昇と関連していた.橈骨動脈採取の忍容性は良好であった.
橈骨動脈グラフトは,伏在静脈グラフトよりも,1 年目の時点でのグラフト閉塞の発生率が低いことと関連している.橈骨動脈グラフトの開存率は本来の血管の狭窄の重症度に依存するため,橈骨動脈グラフトは,重度の狭窄病変がみられる血管を標的とする場合に優先的に使用すべきである.