乳児クラッベ病の乳児における臍帯血移植
Transplantation of Umbilical-Cord Blood in Babies with Infantile Krabbe's Disease
M.L. Escolar and Others
乳児クラッベ病は,幼少期に神経症状が進行性に増悪し,死にいたる疾患である.われわれは,家族歴からクラッベ病と診断された新生児において,症状発現前に非血縁ドナーから臍帯血移植を行うことにより,疾患の自然経過が好転するという仮説を立てた.症状発現前に移植を受けた新生児の転帰を,発現後に移植を受けた乳児の転帰,および未治療のクラッベ病罹患小児のコホート集団における転帰と比較した.
乳児クラッベ病を有する,無症状の新生児 11 例(生後 12~44 日)と,症状のある乳児 14 例(生後 142~352 日)が,骨髄破壊的化学療法後に非血縁ドナーから臍帯血移植を受けた.生着率,生存率,および神経発達機能を,4 ヵ月~6 年間経時的に評価した.
ドナー細胞の生着率と患児の生存率は,無症状の新生児では共に 100%(追跡期間の中央値 3.0 年),症状のある乳児ではそれぞれ 100%,43%であった(追跡期間の中央値 3.4 年).生存患児では,ドナー由来の造血細胞が長期間生着し,ガラクトセレブロシダーゼの血中濃度が正常に戻っていた.症状発現前に移植を受けた乳児では,中枢ミエリン形成がすすみ,発達能力が継続的に向上し,その大半が年齢相応の認知機能と言語理解能力を有していた.しかし,少数の患児では,言語表出能力に軽度~中程度の遅れと,粗大運動機能に軽度~重度の遅滞がみられた.症状発現後に移植を受けた小児では,神経症状はほとんど改善しなかった.
乳児クラッベ病の新生児に非血縁ドナーからの臍帯血移植を行うと,疾患の自然経過が好転した.症状発現後の乳児に移植を行っても,神経症状の実質的な改善はもたらされなかった.