October 6, 2005 Vol. 353 No. 14
アラスカ産カキによる腸炎ビブリオ腸炎の集団発生
Outbreak of Vibrio parahaemolyticus Gastroenteritis Associated with Alaskan Oysters
J.B. McLaughlin and Others
腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)は,米国では魚介類による胃腸炎の主要原因であり,一般的に水温の比較的高い河口域で採られた生ガキの摂取と関連している.アラスカ産の魚介類摂取による V. parahaemolyticus 感染の集団発生を報告する.
観光船上で胃腸炎が発生したという報告を受け,乗客を対象に後ろ向きコホート研究を行った.また,他の症例を同定するためにアラスカ全土で積極的サーベイランスを行い,V. parahaemolyticus の感染源と集団発生の誘因を同定するために環境調査を実施した.
乗客 189 人中 132 人(70%)に面接を行い,うち 22 人(17%)が本研究における胃腸炎症例の定義を満たした.多重ロジスティック回帰分析において,生ガキの摂取が本疾患の唯一の有意な予測因子であり,カキを摂取した人の発病率は 29%であった.積極的サーベイランスから,計 62 例の胃腸炎患者が同定された.検査した大部分の患者とカキの環境標本から,血清型 O6:K18 の V. parahaemolyticus が分離された.パルスフィールドゲル電気泳動パターンでは,臨床分離菌とカキからの分離菌とのあいだに高い相関がみられた.集団発生に関連したカキは,すべて 1 日の平均海水温が 15.0℃(生ガキ摂取による V. parahaemolyticus 疾患リスクの理論的な閾値)を超えたときに収穫されていた.集団発生に関与したカキ養殖場では,1997 年以降,7 月と 8 月の平均海水温が 1 年で 0.21℃上昇していた(線形回帰分析で P<0.001).2004 年は,この養殖場の 7 月と 8 月の平均海水温が 15.0℃未満に低下しなかった唯一の年であった.
この研究により,V. parahaemolyticus による疾患の原因として記録されているカキの産地の北限が,1,000 km 北に引き上げられた.海水温の上昇が,米国で最大規模の V. parahaemolyticus の集団発生の 1 つに寄与したと考えられる.