October 13, 2005 Vol. 353 No. 15
アスベスト曝露と胸膜中皮腫,血清オステオポンチン濃度
Asbestos Exposure, Pleural Mesothelioma, and Serum Osteopontin Levels
H.I. Pass and Others
胸膜中皮腫におけるオステオポンチンの発現を調べ,以下の 3 つの集団で血清オステオポンチン濃度を測定した.3 群は,アスベストに曝露した癌のない被験者,アスベストに曝露しておらず癌のない被験者,アスベストに曝露した胸膜中皮腫患者とした.
アスベストに関連する非悪性肺疾患のある被験者 69 例のグループを,アスベスト曝露のない被験者 45 例,および外科的に病期分類された胸膜中皮腫患者 76 例と比較した.免疫組織化学検査で腫瘍組織のオステオポンチンを調べ,酵素免疫測定法により血清オステオポンチン濃度を測定した.
年齢をマッチさせた,アスベストに曝露した被験者と曝露していない被験者とのあいだでは,血清オステオポンチン濃度の平均値(±SE)に有意差は認められなかった(それぞれ 30±3 ng/mL,20±4 ng/mL;P=0.06).アスベスト曝露群では,血清オステオポンチン濃度の高値は,胸膜肥厚斑と肺線維症の両方を有することと関連していたが(56±13 ng/mL),正常な X 線所見(21±5 ng/mL),肥厚斑単独(23±3 ng/mL),肺線維症単独(32±7 ng/mL)とは関連していなかった(P=0.004).血清オステオポンチン濃度は,胸膜中皮腫患者群のほうが,アスベスト曝露群よりも有意に高かった(133±10 ng/mL 対 30±3 ng/mL,P<0.001).免疫組織化学検査では,胸膜中皮腫の検体 38 例中 36 例の腫瘍細胞でオステオポンチンが染色された.アスベスト曝露群と中皮腫群を比較した血清オステオポンチン濃度の ROC 曲線の分析では,オステオポンチン 48.3 ng/mL のカットオフ値における感度は 77.6%,特異度は 85.5%であった.病期 I の中皮腫患者とアスベスト曝露群を比較したサブグループ分析では,オステオポンチン 62.4 ng/mL のカットオフ値における感度は 84.6%,特異度は 88.4%であった.
血清オステオポンチン濃度は,癌のないアスベスト曝露者と胸膜中皮腫のあるアスベスト曝露者を識別するために用いることができる.