December 22, 2005 Vol. 353 No. 25
エフェクターメモリー T 細胞,初期転移,そして大腸癌の生存率
Effector Memory T Cells, Early Metastasis, and Survival in Colorectal Cancer
F. Pages and Others
大腸癌の初期の転移性浸潤において,腫瘍浸潤性の免疫細胞が果す役割は知られていない.
大腸癌の切除標本 959 例において,初期の転移性浸潤を示す病理学的徴候(静脈塞栓,リンパ浸潤,神経周囲浸潤)を調べた.腫瘍内の局所免疫応答は,フローサイトメトリー(39 例),低密度アレイリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(75 例),組織マイクロアレイ(415 例)で検討した.
単変量解析では,初期の転移性浸潤を示す組織学的徴候の有無により,無病生存率および全生存率に有意差が認められた(P<0.001).多変量 Cox 解析では,従来の病理学的な腫瘍結節転移(TNM)ステージが初期段階であること(P<0.001)と,初期の転移性浸潤がみられないこと(P=0.04)は,それぞれ独立して生存率の上昇と関連していた.初期の転移性浸潤を示す徴候がある腫瘍と比較して,そのような徴候がない腫瘍では免疫細胞の浸潤が増加しており,1 型ヘルパーエフェクター T 細胞の産物(CD8,T-BET [T-box 転写因子 21],インターフェロン制御因子 1,インターフェロン-γ,グラニュリシン,グランザイム B)のメッセンジャー RNA(mRNA)レベルが増加していたが,炎症メディエータや免疫抑制分子のレベルは増加していなかった.この 2 つのタイプの腫瘍では,65 種類の組み合せの T 細胞マーカーの発現レベルに有意差がみられ,階層的クラスタリングでは,T 細胞の移行,活性化,分化のマーカーが,初期の転移性浸潤を示す徴候のない腫瘍で増加していた.このような徴候のない腫瘍ではまた,CD8+ T 細胞数が,初期のメモリー T 細胞(CD45RO+CCR7-CD28+CD27+)からエフェクターメモリー T 細胞(CD45RO+CCR7-CD28-CD27-)まで,広範囲に増加していた.免疫組織化学検査の評価では,浸潤性メモリー CD45RO+細胞が高レベルで存在することは,初期の転移性浸潤を示す徴候がみられないこと,病理学的病期の進行が遅いこと,および生存率の上昇と相関していた.
大腸癌内での免疫応答を示す徴候は,初期の転移性浸潤の病理学的所見がみられないこと,および生存の延長と関連している.