心臓以外の大手術における β 遮断薬による周術期治療と術後死亡
Perioperative Beta-Blocker Therapy and Mortality after Major Noncardiac Surgery
P.K. Lindenauer and Others
β 遮断薬による周術期治療は,無作為試験からの証拠が限られているにもかかわらず,現在広く推奨されている.周術期の β 遮断薬の使用とそれに関連する院内死亡率を,日常の臨床診療において評価した.
米国内 329 ヵ所の病院で,2000 年と 2001 年に心臓以外の大手術を受けた 18 歳以上の患者を対象に,後ろ向きコホート研究を行った.周術期に β 遮断薬投与を受けた患者と受けていない患者の差を傾向スコアマッチングにより補正し,多変量ロジスティックモデルを用いて院内死亡率を比較した.
患者 782,969 例中,663,635 例(85%)には β 遮断薬に対する禁忌の記録がなかった.うち 122,338 例(18%)は入院後 2 日間 β 遮断薬投与を受けており,そのうち 14%は改訂版心リスク指標(Revised Cardiac Risk Index;RCRI)のスコアが 0 で,44%はスコアが 4 以上であった.周術期の β 遮断薬治療と死亡リスクの関係は,心リスクと相関して変化した.RCRI スコアが 0 または 1 の患者 580,665 例では,治療による効果はみられず,有害である可能性があった.RCRI スコアが 2,3,あるいは 4 以上の患者では,院内死亡に対する調整オッズ比はそれぞれ 0.88(95%信頼区間 0.80~0.98),0.71(95%信頼区間 0.63~0.80),0.58(95%信頼区間 0.50~0.67)であった.
心臓以外の大手術を受けた患者では,周術期の β 遮断薬療法によって,リスクの高い患者では院内死亡リスクが低下するが,リスクの低い患者では低下しない.高リスク患者における β 遮断薬の使用をふやすことで,患者の安全性が高まる可能性がある.