October 11, 2007 Vol. 357 No. 15
新生児において細菌の気道定着後に起こる小児喘息
Childhood Asthma after Bacterial Colonization of the Airway in Neonates
H. Bisgaard and Others
重度の反復性喘鳴を呈する若年小児の気道の病理学的特徴から,細菌の定着と早期喘息の起因との関連が示唆される.無症候の新生児の下咽頭における細菌の定着と,生後 5 年間で発現する反復性喘鳴,喘息,アレルギーとの関連の可能性を検討するために研究を行った.
被験者は,コペンハーゲン小児喘息前向き研究(Copenhagen Prospective Study on Asthma in Childhood)の出生コホート集団で,喘息の母親から生まれた小児であった.生後 1 ヵ月の無症候の乳児の下咽頭部から吸引液を採取し,肺炎球菌,インフルエンザ菌,Moraxella catarrhalis,黄色ブドウ球菌の培養を行った.生後 5 年間,喘鳴を前向きにモニタリングし,日誌に記録した.4 歳の時点で血中好酸球数,総 IgE,特異的 IgE を測定した.5 歳の時点で肺機能を評価し,喘息の診断を行った.
生後 1 ヵ月の乳児 321 例の下咽頭サンプルを培養した.乳児の 21%に,肺炎球菌,Moraxella catarrhalis,インフルエンザ菌のいずれか,あるいはその複数が定着していた.黄色ブドウ球菌を除くこれらの細菌のうち 1 種類以上の定着には,持続性の喘鳴(ハザード比 2.40,95%信頼区間 [CI] 1.45~3.99),喘鳴の急性かつ重度の増悪(ハザード比 2.99,95% CI 1.66~5.39),喘鳴による入院(ハザード比 3.85,CI 1.90~7.79)との有意な関連があった.新生児期に肺炎球菌,Moraxella catarrhalis,インフルエンザ菌,またはこれらの細菌の複数の定着がみられた小児では,4 歳の時点における血中好酸球数と総 IgE の値が有意に上昇していたが,特異的 IgE に有意な影響はみられなかった.β2 作動薬投与後,5 歳の時点における喘息の有病率と気道抵抗性の可逆性は,新生児期にこれらの細菌の定着がみられた小児で,定着がみられなかった小児と比べて有意に高かった(33% 対 10%と 23% 対 18%).
下咽頭部に,肺炎球菌,インフルエンザ菌,Moraxella catarrhalis のいずれか,あるいはその複数が定着している新生児では,幼少期における反復性喘鳴と喘息のリスクが増加する.