March 13, 2008 Vol. 358 No. 11
術中覚醒とバイスペクトラルインデックス
Anesthesia Awareness and the Bispectral Index
M.S. Avidan and Others
麻酔中に意識が戻る術中覚醒は,長期的な心理学的影響をもたらす可能性のある深刻な合併症である.処理脳波から算出されるバイスペクトラルインデックス(BIS)の使用により,BIS 値が 60 以下に維持されている場合に術中覚醒の発生率が低下することが報告されている.この研究では,この合併症の高リスク患者において術中覚醒を減少させるために,BIS に基づくプロトコールが,呼気終末麻酔ガス(ETAG)の濃度測定に基づくプロトコールよりも優れているかどうかを明らかにすることを試みた.
患者 2,000 例を,BIS を指標とする麻酔(BIS の目標範囲 40~60)と,ETAG を指標とする麻酔(ETAG の目標範囲 0.7~1.3 MAC [最小肺胞内濃度])のいずれかに無作為に割り付けた.術中覚醒について,術後に 3 回(抜管後 0~24 時間,24~72 時間,30 日)患者を評価した.
BIS 群 967 例,ETAG 群 974 例を評価した.明らかな術中覚醒は,各群 2 例ずつ発生した(絶対差 0%,95%信頼区間 [CI] -0.56~0.57%).これらの確定例のうち,1 例では BIS 値が 60 を超え,3 例では ETAG 濃度が 0.7 MAC 未満であった.患者全例の時間平均 ETAG 濃度の平均(±SD)は,BIS 群で 0.81±0.25 MAC,ETAG 群で 0.82±0.23 MAC であった(P=0.10,BIS 群と ETAG 群の差に関する 95% CI -0.04~0.01 MAC).
この研究では,BIS モニタリングで術中覚醒の発生率が低下することを報告した先行研究の結果は再現されず,BIS プロトコールの使用と揮発性麻酔ガスの投与減少との関連も示されなかった.術中覚醒は,BIS 値と ETAG 濃度が目標範囲内であっても発生した.この観察所見は,BIS モニタリングを標準診療の一環としてルーチンに行うことを支持するものではない.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00281489)