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April 10, 2008 Vol. 358 No. 15

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米国における流行性耳下腺炎の最近の再流行
Recent Resurgence of Mumps in the United States

G.H. Dayan and Others

背景

米国の学童に対する流行性耳下腺炎ワクチンの 2 回接種が 1990 年から普及したことにより,流行性耳下腺炎症例の報告率は歴史的に低くなった.2010 年までの根絶目標が立てられたが,2006 年,米国において過去 20 年間で最大の流行性耳下腺炎の流行が起こった.

方 法

2006 年に報告された流行性耳下腺炎症例に関する全米データ,もっとも罹患者の多かった州の詳細な症例データ,3 つの全米調査によるワクチン接種率データを検討した.

結 果

計 6,584 例の流行性耳下腺炎症例が 2006 年に報告され,そのうちの 76%が 3 月~5 月に発生していた.入院は 85 件あったが,死亡例の報告はなかった.患者の 85%が,中西部の隣接する 8 州に居住していた.流行性耳下腺炎の全米発生率は 10 万人あたり 2.2 例で,18~24 歳の人でもっとも発症率が高かった(ほかの全年齢集団を合計した発症率の 3.7 倍).サブグループ解析において,これらの患者の 83%は,最近大学に通っていたことが確認された.罹患者の多い 8 州でワクチン接種歴が確認された患者のうち,全体で 63%,18~24 歳の患者では 84%が流行性耳下腺炎ワクチンを 2 回接種していた.流行前の 12 年間で,就学前児童における流行性耳下腺炎ワクチン 1 回の接種率は,全米で 89%以上,罹患者の多い州では 86%以上であった.2006 年の青少年におけるワクチン 2 回の接種率は全米で 87%であり,これは米国史上最高であった.

結 論

流行性耳下腺炎を含むワクチンの 2 回接種率が高いにもかかわらず,大規模な流行性耳下腺炎の流行が起こった.これは,とくに学童期に 2 回目の接種を受けた可能性の高い中西部州の大学生年齢の成人での,2 回の接種による免疫不成立に特徴付けられる.今後の流行を回避し,流行性耳下腺炎根絶を達成するためには,より効果的な流行性耳下腺炎ワクチンや,ワクチン政策の変更が必要であろう.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2008; 358 : 1580 - 9. )