妊娠糖尿病の治療のためのメトホルミンとインスリンの比較
Metformin versus Insulin for the Treatment of Gestational Diabetes
J.A. Rowan and Others
メトホルミンは,妊娠糖尿病の女性に対する理にかなった治療薬であるが,この病態に使用した際の有効性や安全性を評価する無作為化試験は行われていない.
妊娠 20~33 週の妊娠糖尿病の女性 751 例を,メトホルミン(必要であればインスリンを追加)とインスリンのいずれかを用いた非盲検治療に無作為に割り付けた.主要転帰は,新生児の低血糖,呼吸困難,光線療法の必要性,分娩外傷,5 分後アプガースコア 7 点未満,未熟児であることの複合転帰とした.試験は,インスリン治療を受けた女性の児と比較して,メトホルミン治療を受けた女性の児における複合転帰の 33%の増加(30~40%)を除外するデザインとした.副次的転帰は,新生児の身体測定値,母体の血糖コントロール,母体の高血圧合併,分娩後の耐糖能,治療忍容性などとした.
メトホルミン群 363 例のうち,92.6%は分娩までメトホルミン投与を受け続け,46.3%はインスリンの追加投与を受けた.主要複合転帰の発生率は,メトホルミン群で 32.0%,インスリン群で 32.2%であった(相対リスク 0.99,95%信頼区間 0.80~1.23).メトホルミン群では,インスリン群と比較して,次の妊娠でも今回割り付けられた治療を選択すると答えた女性が多かった(76.6% 対 27.2%,P<0.001).ほかの副次的転帰の発生率には群間で有意差はなかった.メトホルミンの使用に関連した重篤な有害事象はみられなかった.
妊娠糖尿病の女性において,メトホルミン(単独またはインスリンを追加)は,インスリンと比較して,周産期合併症の増加とは関連しない.また,これらの女性はインスリンによる治療よりもメトホルミンによる治療を好んだ.(Australian New Zealand Clinical Trials Registry 番号:12605000311651).