大規模な社会的ネットワークにおける喫煙の集団力学
The Collective Dynamics of Smoking in a Large Social Network
N.A. Christakis and J.H. Fowler
米国における喫煙率は,この 30 年で大幅に減少している.われわれは,喫煙行動が人から人へと伝播する程度と,広く結び付いた人々のグループが一緒に禁煙する程度について検討した.
1971~2003 年にフラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study)の一環として繰り返し評価を受けた 12,067 人から成る,緊密に相互に結び付いた社会的ネットワークを調査した.ネットワーク解析法と経時的統計モデルを用いた.
ネットワーク内には判別可能な喫煙者・非喫煙者のクラスターが存在し,クラスターの分離(被験者 ― 接点のある人)は 3 段階に及んだ.集団全体で喫煙が減少したにもかかわらず,喫煙者クラスターの規模はいずれの時点でも変わらなかったことから,各グループが全体で一緒に禁煙したことが示唆された.喫煙者は次第に社会的ネットワークの周辺部でみられるようになった.配偶者の禁煙により喫煙の確率は 67%低下した(95%信頼区間 [CI] 59~73).兄弟の禁煙により喫煙の確率は 25%低下した(95% CI 14~35).友人の禁煙により喫煙の確率は 36%低下した(95% CI 12~55).小企業で働く人は,同僚の禁煙により喫煙の確率が 34%低下した(95% CI 5~56).高学歴の友人同士では,低学歴の友人同士に比べ,互いに与える影響が大きかった.地理的に近接する隣人同士では,このような影響は観察されなかった.
ネットワーク現象は,禁煙に関連すると考えられる.喫煙行動は,近接・遠隔双方の社会的つながりを通して伝播する.相互に結び付いた人々のグループは一緒に禁煙し,喫煙者は次第に社会の周辺部に押しやられる.これらの知見は,節煙と禁煙を進めるための臨床的・公衆衛生的介入に影響を与える.