急性心筋梗塞に対する primary PCI 施行時に おけるビバリルジン
Bivalirudin during Primary PCI in Acute Myocardial Infarction
G.W. Stone and Others
安定狭心症および非 ST 上昇型急性冠症候群で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受ける患者において,直接トロンビン阻害薬ビバリルジン(bivalirudin)による治療は,ヘパリン+糖蛋白 IIb/IIIa 阻害薬と同程度に虚血を抑制し,出血性合併症を減少させる.しかし,高リスク患者におけるビバリルジンの安全性と有効性は明らかにされていない.
ST 上昇型心筋梗塞発症後 12 時間以内に受診し,primary PCI を受ける患者 3,602 例を,ヘパリン+糖蛋白 IIb/IIIa 阻害薬による治療と,ビバリルジン単独による治療のいずれかに無作為に割り付けた.2 つの主要エンドポイントは,重大な出血,ならびに臨床有害事象の複合とした.臨床有害事象の複合(以下,全臨床有害事象と表記)の定義は,30 日以内の,重大な出血,および重大な心血管系有害事象(死亡,再梗塞,虚血による標的血管の血行再建術,脳卒中を含む)の組合せとした.
ビバリルジン単独による抗凝固療法では,ヘパリン+糖蛋白 IIb/IIIa 阻害薬を用いた場合に比べ,30 日間の全臨床有害事象の発生率が低下した(9.2% 対 12.1%,相対リスク 0.76,95%信頼区間 [CI] 0.63~0.92,P=0.005).これは重大な出血の発生率の低下(4.9% 対 8.3%,相対リスク 0.60,95% CI 0.46~0.77,P<0.001)に起因するものであった.ビバリルジン群では,24 時間以内に生じる急性ステント血栓症のリスクが増加したが,30 日目までの期間では有意な増加は認められなかった.ビバリルジン単独による治療では,ヘパリン+糖蛋白 IIb/IIIa 阻害薬を用いた場合に比べ,心臓が原因の 30 日死亡率(1.8% 対 2.9%,相対リスク 0.62,95% CI 0.40~0.95,P=0.03),および全死因死亡率(2.1% 対 3.1%,相対リスク 0.66,95% CI 0.44~1.00,P=0.047)が有意に低かった.
ST 上昇型心筋梗塞で primary PCI を受ける患者において,ビバリルジン単独による抗凝固療法は,ヘパリン+糖蛋白 IIb/IIIa 阻害薬を用いた場合に比べ,30 日間における重大な出血および全臨床有害事象の発生率を有意に低下させた.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00433966)