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June 26, 2008 Vol. 358 No. 26

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マルファン症候群におけるアンジオテンシン II 阻害と大動脈起始部拡張
Angiotensin II Blockade and Aortic-Root Dilation in Marfan's Syndrome

B.S. Brooke and Others

背景

大動脈解離をもたらす進行性の大動脈起始部拡張は,マルファン症候群患者における若年死の主な原因である.マルファン症候群のモデルマウスで得られた最近のデータから,大動脈起始部拡張は,トランスフォーミング増殖因子 β(TGF-β)による過剰なシグナル伝達が原因であることが示唆されたが,これはアンジオテンシン II 受容体拮抗薬(ARB)を含む TGF-β 阻害薬による治療で緩和することが可能である.われわれは,重度の大動脈起始部拡張を有するマルファン症候群の患児を対象に,ARB に対する臨床反応を評価した.

方 法

進行性大動脈起始部拡張の抑制に ARB 以外での薬物療法が奏効しなかったあと,ARB による 12~47 ヵ月の治療期間中に追跡を行ったマルファン症候群の患児 18 例を同定した.使用された ARB は,17 例がロサルタン,1 例がイルベサルタンであった.ARB による治療を開始する前後の大動脈起始部径の変化率を比較して,ARB 療法の有効性を評価した.

結 果

大動脈起始部径の平均(±SD)変化率は,それまでの薬物療法期間中は 3.54±2.87 mm/年であったのが,ARB 療法期間中は 0.46±0.62 mm/年と有意に低下した(P<0.001).Z スコアの変化率で表した大動脈起始部拡張の正常からの偏移は,ARB 療法の開始後,平均差 1.47/年で減少した(95%信頼区間 0.70~2.24,P<0.001).同じくマルファン症候群で拡張する傾向のある Valsalva 洞と上行大動脈の接合部も,ARB 療法期間中は径の変化率が減少を示した(P<0.05).しかし,通常マルファン症候群では拡大しない遠位上行大動脈は,ARB 療法の影響を受けなかった.

結 論

小規模なコホート研究で,マルファン症候群患者における ARB 療法の使用は,進行性大動脈起始部拡張の進行を有意に遅延させた.これらの知見は無作為化試験で確認する必要がある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2008; 358 : 2787 - 95. )