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February 7, 2008 Vol. 358 No. 6

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ハッチンソン・ギルフォード早老症候群の表現型と臨床経過
Phenotype and Course of Hutchinson-Gilford Progeria Syndrome

M.A. Merideth and Others

背景

ハッチンソン・ギルフォード早老症候群は,早期老化を伴う,まれな散発性常染色体優性の症候群であり,多くの場合,13 歳頃に心筋梗塞や脳卒中によって死にいたる.この症候群の大部分の症例でみられる遺伝的基礎は,ラミン A(LMNA)遺伝子の 608 番目のコドンにおけるグリシン GGC からグリシン GGT への変化であり,これが潜在性スプライス供与部位を活性化して,異常ラミン A が産生される.これにより核膜が破壊され,転写が変化する.

方 法

2005 年 2 月~06 年 5 月に,包括的な臨床プロトコールを用いて,年齢 1~17 歳のハッチンソン・ギルフォード早老症候群の患児 15 例を登録した.これは,世界で知られているこの症候群の患者のほぼ半数にあたる.

結 果

臨床検査で,皮膚硬化,関節拘縮,骨異常,脱毛,成長障害を 15 例全例に認めた.心血管系・中枢神経系の続発症も確認された.これまで認識されていなかった所見として,プロトロンビン時間の延長,血小板数増加と血清リン値の上昇,関節可動域の低下,低周波数での伝音性難聴,口腔機能障害などがあった.成長障害は,栄養不良,インスリン反応の欠如,成長ホルモン欠損とは関連していなかった.数人の患者に成長ホルモンを投与したところ,身長が 10%,体重が 50%増加した.心血管系の検査で,血圧上昇,血管コンプライアンスの低下,足関節上腕血圧比の低下,外膜肥厚など,加齢に伴う血管機能の低下が明らかになった.

結 論

ハッチンソン・ギルフォード早老症候群に対する理解を深めることで,正常の加齢に対する洞察が得られる可能性があることから,この症候群の詳細な表現型を確立することは重要である.異常ラミン A(プロジェリン)は,加齢に伴い正常細胞内に蓄積すると考えられる.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00365092)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2008; 358 : 592 - 604. )