September 25, 2008 Vol. 359 No. 13
急性期脳梗塞発症後 3~4.5 時間の時点におけるアルテプラーゼを用いた血栓溶解療法
Thrombolysis with Alteplase 3 to 4.5 Hours after Acute Ischemic Stroke
W. Hacke and Others
急性期脳梗塞に対して,アルテプラーゼの静脈内投与による血栓溶解療法は承認されている唯一の治療法であるが,発症から 3 時間を過ぎて投与した場合の有効性と安全性は確立されていない.脳梗塞発症から 3~4.5 時間のあいだに投与したアルテプラーゼの有効性と安全性について検討した.
急性期脳梗塞患者を,CT 検査で脳出血または大きな梗塞が認められた患者を除外後,二重盲検法でアルテプラーゼ静脈内投与群(0.9 mg/kg)とプラセボ投与群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要エンドポイントは 90 日目の時点における障害とし,転帰良好(0 が無症状で 6 が死亡を示す,0~6 の修正 Rankin スケールが 0 または 1)と,転帰不良(修正 Rankin スケールが 2~6)のいずれかに分けた.副次的エンドポイントは,4 つの神経学的スコアと障害スコアを組み合わせた総合的な転帰の解析とした.安全性エンドポイントは,死亡,症候性頭蓋内出血,その他の重篤な有害事象などとした.
計 821 例を登録し,418 例をアルテプラーゼ群,403 例をプラセボ群に無作為に割り付けた.アルテプラーゼの投与時間の中央値は 3 時間 59 分であった.転帰良好であった患者の数は,アルテプラーゼ群のほうがプラセボ群よりも多かった(52.4% 対 45.2%,オッズ比 1.34,95%信頼区間 [CI] 1.02~1.76,P=0.04).総合的な転帰の解析でも,アルテプラーゼ群のほうがプラセボ群よりも良好であった(オッズ比 1.28,95% CI 1.00~1.65,P<0.05).頭蓋内出血の発生率は,アルテプラーゼ群のほうがプラセボ群よりも高かった(すべての頭蓋内出血について 27.0% 対 17.6%,P=0.001;症候性頭蓋内出血について 2.4% 対 0.2%,P=0.008).死亡率にはアルテプラーゼ群とプラセボ群のあいだで有意差は認められなかった(それぞれ 7.7%,8.4%,P=0.68).その他の重篤な有害事象の発現率にも有意差は認められなかった.
急性期脳梗塞患者に対して発症から 3~4.5 時間のあいだにアルテプラーゼを静脈内投与した場合,プラセボに比べて臨床転帰は有意に良好であった.ただし,アルテプラーゼでは症候性頭蓋内出血がより高頻度にみられた.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00153036)