October 23, 2008 Vol. 359 No. 17
幹細胞移植における Toll 様受容体 4 の多型とアスペルギルス症
Toll-like Receptor 4 Polymorphisms and Aspergillosis in Stem-Cell Transplantation
P.-Y. Bochud and Others
Toll 様受容体(Toll-like receptor:TLR)は,真菌病原体に対する免疫応答に不可欠な要素である.同種造血細胞移植レシピエントにおける侵襲性アスペルギルス症のリスクに対して,TLR の多型が果たす役割を検討した.
造血細胞移植レシピエントとその非血縁ドナーから成る 336 例のコホートを対象として,Toll 様受容体 2 遺伝子(TLR2),Toll 様受容体 3 遺伝子(TLR3),Toll 様受容体 4 遺伝子(TLR4),Toll 様受容体 9 遺伝子(TLR9)の一塩基多型(SNP)20 個について解析した.多変量 Cox 回帰分析を用いて,侵襲性アスペルギルス症のリスクを評価した.また,妥当性検証のため,血縁・非血縁ドナーから造血細胞移植を受けた症例 103 例と,マッチさせた対照 263 例を対象として,この解析の再現性評価を行った.
探索調査では,ドナーの 2 つの TLR4 ハプロタイプ(S3,S4)により,侵襲性アスペルギルス症のリスク増加が認められた(S3 についての補正ハザード比 2.20,95%信頼区間 [CI] 1.14~4.25,P=0.02;S4 についての補正ハザード比 6.16,95% CI 1.97~19.26,P=0.002).S4 ハプロタイプは,TLR4 の機能に影響を及ぼす,強い連鎖不均衡にある 2 個の SNP(1063 A/G [D299G],1363 C/T [T399I])の保有者に認められた.妥当性の検証においても,ドナーの S4 ハプロタイプによる侵襲性アスペルギルス症のリスク増加が認められた(補正オッズ比 2.49,95% CI 1.15~5.41,P=0.02).この関連は造血細胞移植の非血縁レシピエントでは認められたが(オッズ比 5.00,95% CI 1.04~24.01,P=0.04),血縁レシピエントでは認められなかった(オッズ比 2.29,95% CI 0.93~5.68,P=0.07).探索調査では,ドナーまたはレシピエントがサイトメガロウイルス(CMV)について血清陽性である場合,ドナーが S4 について血清陽性である場合,CMV と S4 の両方について血清陽性である場合に,CMV と S4 について血清陰性である場合と比べて,侵襲性アスペルギルス症の 3 年発症率の増加(12% 対 1%,P=0.02)と,再発とは関連しない死亡率の増加(35% 対 22%,P=0.02)が認められた.
この研究から,非血縁ドナーからの造血細胞移植レシピエントにおいて,ドナーの TLR4 の S4 ハプロタイプと侵襲性アスペルギルス症のリスクが関連することが示唆される.