October 23, 2008 Vol. 359 No. 17
クロピドグレルに関する処方規定変更後の心血管転帰
Cardiovascular Outcomes after a Change in Prescription Policy for Clopidogrel
C.A. Jackevicius and Others
薬剤償還規定は,それにより急性症状に有効とされる薬剤の適時使用が妨げられたとすれば,患者の転帰に悪影響を及ぼすことになる.冠動脈ステント留置術を施行する患者に対し,アスピリンにクロピドグレルを併用することは,血栓症予防の標準療法として推奨されている.われわれは,カナダの 1 州政府により,急性心筋梗塞後に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)でステント留置術を施行する患者へのクロピドグレルの使用に関して,薬剤給付プログラムの事前許可制が,より規制の緩和された限定使用制に変更された例における人口レベルでの影響について検討した.
2000 年 4 月 1 日~2005 年 3 月 31 日のあいだに,カナダ・オンタリオ州で急性心筋梗塞に対しステント留置術を受けた 65 歳以上の患者全例を対象として,住民ベースの後ろ向き時系列解析を実施した.主要転帰は,1 年の時点での死亡,急性心筋梗塞の再発,PCI,冠動脈バイパス術の複合発生率とし,性別と年齢で補正した.副次的転帰は重大な出血とした.
心筋梗塞発症後の退院から 30 日以内におけるクロピドグレルの使用率は,事前許可制期間には 35%であったのが,限定使用制期間には 88%に上昇した.クロピドグレルの処方が最初に調剤されるまでの期間の中央値は,事前許可制期間では 9 日であったのが,限定使用制期間では 0 日に減少した.1 年の時点での複合心血管転帰は,事前許可制群では 15%であったのが,限定使用制群では 11%に有意に減少した(P=0.02).出血率は両群で同等であった.
事前許可制を撤廃することで,冠動脈ステント留置施行患者に対してクロピドグレルが適時使用できるようになり,心血管転帰が改善された.