December 25, 2008 Vol. 359 No. 26
小児の不安障害に対する認知行動療法とセルトラリン療法,またはその併用
Cognitive Behavioral Therapy, Sertraline, or a Combination in Childhood Anxiety
J.T. Walkup and Others
不安障害は,小児期や思春期によくみられる精神疾患である.治療法として認知行動療法と選択的セロトニン再取込み阻害薬の有効性が示されているが,両治療法の効果の比較や,併用による効果の検討はほとんど行われていない.
この無作為化比較試験では,分離不安障害,全般性不安障害,社会恐怖症の初期診断を受けた 7~17 歳の患児 488 例を,14 セッションの認知行動療法,セルトラリン療法(最高 200 mg/日),セルトラリン療法と認知行動療法の併用,プラセボ投与のいずれかに 2:2:2:1 の割合で割り付け,治療を 12 週間行った.ベースラインおよび 4 週,8 週,12 週の時点で,不安の重症度と障害に関するカテゴリーによる評価と点数による評価を実施した.
臨床全般印象改善尺度(Clinical Global Impression-Improvement scale)で,「非常に大きく改善した」もしくは「大きく改善した」と評価された患児の割合は,併用療法群で 80.7%(P<0.001),認知行動療法群で 59.7%(P<0.001),セルトラリン群で 54.9%(P<0.001)であり,いずれもプラセボ群(23.7%)より優れていた.併用療法は,それぞれの単独療法より優れていた(P<0.001).小児不安評価尺度(Pediatric Anxiety Rating Scale)では,反応のパターンや程度について同等の結果を示した.すなわち,併用療法は認知行動療法よりも反応が大きく,その認知行動療法の効果はセルトラリン療法と同等であり,すべての治療法がプラセボ投与よりも優れていた.セルトラリン群における自殺念慮や殺人念慮などの有害事象の発生率は,プラセボ群と比較して高くはなかった.自殺企図がみられた患児はいなかった.認知行動療法群における不眠,疲労,鎮静,情動不安の頻度は,セルトラリン群より低かった.
不安障害の小児に対する認知行動療法とセルトラリン療法は,いずれも不安の重症度を低下させた.また,両治療法を併用した場合に,奏効率はさらに高くなった.(Clinical Trials.gov 番号:NCT00052078)
本論文(10.1056/NEJMoa0804633)は,2008 年 10 月 30 日に www.nejm.org で発表された.