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July 24, 2008 Vol. 359 No. 4

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血液中の肺癌細胞における EGFR 変異の検出
Detection of Mutations in EGFR in Circulating Lung-Cancer Cells

S. Maheswaran and Others

背景

非小細胞肺癌患者において,上皮細胞成長因子(EGFR)を標的とするチロシンキナーゼ阻害薬の使用は有効であるが,薬剤耐性変異の出現による限界がある.循環血中腫瘍細胞の分子特性解析は,治療中の腫瘍遺伝子型に対する非侵襲的な連続モニタリングのための手段となる可能性がある.

方 法

上皮細胞に対する抗体をコーティングしたマイクロポストを含むマイクロ流体デバイスを用いて,非小細胞肺癌患者の血液から,高純度の循環腫瘍細胞を捕捉した.対立遺伝子に特異的なポリメラーゼ連鎖反応を用いて,循環血中腫瘍細胞から回収した DNA における EGFR 変異の解析を行い,その結果を,並行して分離した血中遊離 DNA,および本来の腫瘍生検標本から得られた結果と比較した.

結 果

転移性非小細胞肺癌患者 27 例から循環血中腫瘍細胞(中央値 74 個/mL)を分離した.予想された EGFR 活性化変異は,12 例中 11 例(92%)の循環血中腫瘍細胞と,12 例中 4 例(33%)の血中遊離 DNA で同定された(P=0.009).EGFR 変異が認められ,チロシンキナーゼ阻害薬の投与を受けた患者から採取した循環血中腫瘍細胞で,薬剤耐性をもたらす T790M 変異が検出された.治療前の腫瘍生検標本で T790M が検出された場合,この変異の存在は無増悪生存期間の短縮と関連した(7.7 ヵ月 対 16.5 ヵ月,P<0.001).循環血中腫瘍細胞の連続解析により,捕捉された細胞数の減少は,X 線上の腫瘍反応と関連することが示された.細胞数の増加は腫瘍の進行と関連し,一部の症例ではさらなる EGFR 変異が出現した.

結 論

肺癌患者の血液中の循環腫瘍細胞の分子解析により,治療中の上皮性腫瘍遺伝子型の変化をモニタリングすることができる可能性がある.

本論文(10.1056/NEJMoa0800668)は,2008 年 7 月 2 日に www.nejm.org で発表された.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2008; 359 : 366 - 77. )