January 15, 2009 Vol. 360 No. 3
肺炎球菌性髄膜炎に対する肺炎球菌結合型ワクチンの効果
Effect of Pneumococcal Conjugate Vaccine on Pneumococcal Meningitis
H.E. Hsu and Others
2000 年に 7 価小児用肺炎球菌結合型ワクチン(pediatric heptavalent pneumococcal conjugate vaccine:PCV7)が導入されて以来,小児および成人における侵襲性肺炎球菌疾患は減少した.しかし,肺炎球菌性髄膜炎に対する PCV7 の効果は明らかにされていない.
米国の 8 施設から収集した住民ベースの能動的サーベイランスデータを用い,1998~2005 年における肺炎球菌性髄膜炎の発症動向を検討した.分離株を,PCV7 血清型(4,6B,9V,14,18C,19F,23F),PCV7 関連血清型(6A,9A,9L,9N,18A,18B,18F,19B,19C,23A,23B),非 PCV7 血清型に分類した.1998~99 年のベースライン値を基準として,肺炎球菌性髄膜炎発症率の変化を評価した.
1,379 例の肺炎球菌性髄膜炎を同定した.100,000 人あたりの発症率は,1998~99 年から 2004~05 年のあいだに,1.13 例から 0.79 例へ低下した(低下率 30.1%,P<0.001).研究期間中に,発症率は 2 歳未満の対象者で 64.0%,65 歳以上の対象者で 54.0%低下した(両群とも P<0.001).PCV7 血清型による発症率は,全年齢で 0.66 例から 0.18 例に低下した(低下率 73.3%,P<0.001).PCV7 関連血清型による発症率は 32.1%低下したが(P=0.08),非 PCV7 血清型による発症率は 0.32 例から 0.51 例に上昇した(上昇率 60.5%,P<0.001).非 PCV7 血清型 19A,22F,35B による発症率はいずれも研究期間中に有意に上昇した.平均して分離株の 27.8%がペニシリン非感受性であったが,クロラムフェニコール非感受性(5.7%),メロペネム非感受性(16.6%),セフォタキシム非感受性(11.8%)の分離株はこれより少なかった.ペニシリン非感受性分離株の比率は,1998~2003 年のあいだに低下したが(32.0%から 19.4%に低下,P=0.01),2003~05 年のあいだでは上昇した(19.4%から 30.1%に上昇,P=0.03).
肺炎球菌性髄膜炎の小児および成人における発症率は,PCV7 の導入以来低下している.PCV7 による全体的な効果は依然として大きいが,最近,抗菌薬非感受性株を含む非 PCV7 血清型による髄膜炎が増加していることが懸念される.