March 31, 2011 Vol. 364 No. 13
肥満高齢者における減量,運動,それらの併用と身体機能
Weight Loss, Exercise, or Both and Physical Function in Obese Older Adults
D.T. Villareal and Others
肥満は,加齢による身体機能の低下を促進し,高齢者の虚弱の原因となるが,高齢者の肥満に対する適切な治療には議論がある.
1 年間の無作為化比較試験において,65 歳以上の肥満成人 107 人を対象に,減量または運動を単独で行った場合と併用した場合の効果を検討した.被験者を対照群,体重管理(ダイエット)群,運動群,体重管理+運動(ダイエット–運動)群に無作為に割り付けた.主要評価項目は改訂版身体機能検査(modified Physical Performance Test)のスコアの変化とした.副次的評価項目は虚弱,身体組成,骨密度,特定の身体機能,QOL などとした.
93 人(87%)の被験者が試験を完了した.intention-to-treatment 解析では,身体機能検査のスコア(高いほど良好な身体状態を示す)は,ダイエット–運動群でダイエット群や運動群よりも上昇し(ベースラインからの上昇率 21%に対し,12%と15%),これら 3 群のスコアはすべて対照群(上昇率 1%)よりも上昇した(群間差の P<0.001).また,最大酸素消費量は,ダイエット–運動群でダイエット群や運動群よりも改善がみられた(上昇率 17%に対し,10%と 8%,P<0.001).機能状態質問票(Functional Status Questionnaire)のスコア(高いほど良好な身体機能を示す)は,ダイエット–運動群でダイエット群よりも上昇した(上昇率 10% 対 4%,P<0.001).体重はダイエット群で 10%,ダイエット–運動群で 9%減少したが,運動群や対照群では減少しなかった(P<0.001).除脂肪体重と股関節骨密度の低下量はダイエット–運動群でダイエット群よりも小さかった(除脂肪体重減少量 ダイエット–運動群 3% 対 ダイエット群 5%,骨密度低下量 ダイエット–運動群 1% 対 ダイエット群 3%,両比較について P<0.05).ダイエット–運動群では筋力,平衡感覚,歩行機能に一貫して改善がみられた(すべての比較について P<0.05).有害事象には,運動に関連した少数の筋骨格損傷などが認められた.
今回の結果から,減量と運動を併用することで,それぞれを単独で行うよりも身体機能に大きな改善が得られることが示唆される.(米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00146107)