米兵における爆風による外傷性脳損傷の検出
Detection of Blast-Related Traumatic Brain Injury in U.S. Military Personnel
C.L. Mac Donald and Others
イラク・アフガニスタン戦争においては爆風による外傷性脳損傷がよくみられるが,その性質に関する根本的な疑問はまだ解消されていない.
軸索損傷に対する感度の高い高度 MRI である拡散テンソル画像(DTI)を用いて,爆風による外傷性脳損傷は外傷性軸索損傷を引き起こすという仮説を検証した.合併症のみられない軽度の外傷性脳損傷と臨床診断された米兵 63 例を対象とした.これらの兵士は,戦地からドイツ・ラントシュトゥールにあるラントシュトゥール地域医療センターに退避し,そこで受傷後 90 日以内に DTI を受けた.全被験者が,一次性爆風を受け,その他の機序による損傷(鈍器による打撃,転倒または自動車の衝突による負傷など)を有していた.対照は,爆風を受け,その他の損傷を有していたが,外傷性脳損傷とは臨床診断されなかった兵士 21 例とした.
外傷性脳損傷を有する被験者の多くで,DTI により明らかになった異常は外傷性軸索損傷に一致した.CT で頭蓋内損傷が検出された例はなかった.対照の DTI 画像と比べて,外傷性脳損傷を有する被験者の DTI 画像では,中小脳脚(P<0.001),帯状束(P=0.002),右眼窩前頭白質(P=0.007)に顕著な異常が認められた.外傷性脳損傷を有する被験者 63 例中 18 例では,DTI で検出された異常部位数は,偶然発生すると予測された数よりも有意に多かった(P<0.001).外傷性脳損傷を有する被験者 47 例における登録後 6~12 ヵ月での追跡 DTI 画像では,損傷の進展を示す持続的な異常が認められた.
米兵の DTI 所見から,爆風による軽度の外傷性脳損傷は軸索損傷を伴う可能性があるという仮説が支持された.しかし,外傷性脳損傷を有する被験者は一次性爆風による損傷のみを有しているわけではなかったため,一次性爆風がその他の損傷と比べてどの程度寄与したかを直接的に検討することはできなかった.さらに,これらの被験者の多くでは,DTI で異常は認められなかった.したがって,外傷性脳損傷は依然として臨床診断にとどまる.(議会監督医学研究プログラム,米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00785304)