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January 20, 2011 Vol. 364 No. 3

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供血者の B 型肝炎ウイルス感染を検出するための核酸検査
Nucleic Acid Testing to Detect HBV Infection in Blood Donors

S.L. Stramer and Others

背景

供血者の B 型肝炎ウイルス(HBV)は,B 型肝炎表面抗原(HBsAg)と抗 B 型肝炎コア抗原抗体(抗 HBc)のスクリーニングにより検出される.しかし現在では,セロコンバージョン前のウィンドウ期に HBV DNA 陽性の供血者を同定することはできない.現在使用されているヒト免疫不全ウイルス(HIV)RNA,C 型肝炎ウイルス(HCV)RNA,HBV DNA を同時三重測定する核酸検査によって,安全性が高まる可能性がある.

方 法

約 370 万例の供血について核酸検査を行い,HBV DNA 陽性で HBsAg 陰性,抗 HBc 陰性であったものを精査した.HBV DNA のみが含まれていることが確認されたサンプルの血清学的特徴,生化学的特徴,分子的特徴を明らかにし,追跡調査で採取したサンプルと感染供血者の性的パートナーから採取したサンプルについて同様の分析を行った.HIV と HCV の血清は陰性であったが,核酸検査で陽性であった供血者についても検討した.

結 果

HBV DNA 陽性の供血者は 9 例同定され(供血 410,540 件中 1 件),このうち 6 サンプルは HBV ワクチン接種歴のある供血者のサンプルで,不顕性感染後に消失したものであった.HBV DNA 陽性の供血者のうち,4 例は HBV 慢性感染者の性的パートナーから HBV に感染した可能性が高かった.ワクチン接種歴のない供血者 2 例は,臨床的に重要な肝障害をきたした.ワクチン接種歴のある供血者 6 例のうち,5 例では遺伝子型 A 以外が主要な株として同定されたが,ワクチン接種歴のない供血者では遺伝子亜型 A2(HBV ワクチンに含まれている)が主要な株であった.血清陰性で核酸検査陽性であった供血 75 件のうち,26 件(HBV 9 件,HCV 15 件,HIV 2 件)は陽性であることが確認された.

結 論

三重測定核酸検査により,セロコンバージョン前のウィンドウ期に,感染可能性のある HBV が HIV,HCV とともに検出された.HBV ワクチン接種は有効であるように思われるが,不顕性のブレイクスルー感染により,A2 以外の HBV 遺伝子亜型を生み出し,臨床的に重要ではない転帰をもたらした.(米国赤十字社ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2011; 364 : 236 - 47. )