急性非代償性心不全患者に対する利尿薬治療戦略
Diuretic Strategies in Patients with Acute Decompensated Heart Failure
G.M. Felker and Others
ループ利尿薬は,急性非代償性心不全患者の治療に不可欠な要素であるが,その使用の指針となるような前向きデータはほとんどない.
前向き二重盲検無作為化試験において,急性非代償性心不全患者 308 例に対し,フロセミドの静脈内投与を,12 時間ごとのボーラス投与または持続注入,および低用量(患者のそれまでの経口投与量と同等)または高用量(それまでの経口投与量の 2.5 倍)の組合せで行う 4 群に割り付けた.プロトコールにより 48 時間後に所定の用量調節ができることとした.複合主要エンドポイントは,ビジュアルアナログスケールスコアの 72 時間の曲線下面積(AUC)で定量化した患者による症状の全般的評価と,ベースラインから 72 時間までの血清クレアチニン値の変化とした.
ボーラス投与と持続注入との比較では,患者による症状の全般的評価(平均 AUC それぞれ 4,236±1,440,4,373±1,404,P=0.47)にも,クレアチニン値の平均変化(それぞれ 0.05±0.3 mg/dL [4.4±26.5 μmol/L],0.07±0.3 mg/dL [6.2±26.5 μmol/L],P=0.45)にも有意差は認められなかった.高用量と低用量との比較では,高用量群のほうが患者による症状の全般的評価の改善が大きくなる傾向が認められたが,有意ではなかった(平均 AUC 4,430±1,401 対 4,171±1,436,P=0.06).クレアチニン値の平均変化には 2 群間で有意差は認められなかった(高用量群 0.08±0.3 mg/dL [7.1±26.5 μmol/L],低用量群 0.04±0.3 mg/dL [3.5±26.5 μmol/L],P=0.21).高用量法は,より強い利尿作用と,いくつかの副次的指標における転帰の改善に関連していたが,腎機能の一時的な低下にも関連した.
急性非代償性心不全患者において,利尿薬のボーラス投与と持続注入,高用量と低用量とで,患者による症状の全般的評価や腎機能の変化に有意差は認められなかった.(米国国立心臓・肺・血液研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00577135)