The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

October 20, 2011 Vol. 365 No. 16

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

近隣環境,肥満,糖尿病 ― 無作為化社会実験
Neighborhoods, Obesity, and Diabetes ― A Randomized Social Experiment

J. Ludwig and Others

背景

近隣環境が肥満および糖尿病の発症に直接関与するかどうかという疑問は解明されていない.今回報告する研究では,社会実験のデータを用いて,無作為に割り付けられた近隣条件の差異と,肥満および糖尿病との関連を評価する.

方 法

1994~98 年に米国住宅都市開発省(HUD)が,貧困率の高い都市部の国勢統計区(収入が連邦政府の貧困閾値を下回る住民が 40%以上)の公営住宅に住む,子どもをもつ女性 4,498 例を,以下の 3 群のいずれかに無作為に割り付けた;住宅バウチャーを提供するが,貧困率の低い国勢統計区(貧困者が住民の 10%未満)に転居した場合にのみ使用可能とする制約を設け,転居に関するカウンセリングを行う群 1,788 例,制約のない従来のバウチャーを提供し,転居に関するカウンセリングはとくに行わない群 1,312 例,バウチャーもカウンセリングも提供しない対照群(1,398 例).長期追跡調査の一環として,2008~10 年に,身長,体重,糖化ヘモグロビン(HbA1c)値などの健康転帰を示すデータの測定を行った.

結 果

長期調査の一環として,体格指数(BMI,体重 [kg]/身長 [m]2)に関するデータを参加者の 84.2%から取得し,HbA1c 値に関するデータを参加者の 71.3%から取得した.データ取得率はすべての群で同程度であった.BMI 35 以上,BMI 40 以上,HbA1c 値 6.5%以上の人の割合は,貧困率の低い地区限定のバウチャーを提供した群のほうが対照群よりも低く,絶対差はそれぞれ 4.61 パーセントポイント(95%信頼区間 [CI] -8.54~-0.69),3.38 パーセントポイント(95% CI -6.39~-0.36),4.31 パーセントポイント(95% CI -7.82~-0.80)であった.従来のバウチャーを提供した群と対照群とのあいだの差は有意ではなかった.

結 論

貧困率の高い近隣環境から貧困率の低い近隣環境への転居を促すことは,極度の肥満および糖尿病の有病率における,わずかではあるが重要である可能性のある低下と関連していた.これらの関連の基礎にある機序は明らかではないが,健康増進のために地域社会レベルで介入計画を立てるうえで指針となりうることを考慮すると,さらなる検討を行う価値がある.(米国住宅都市開発省ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2011; 365 : 1509 - 19. )