November 17, 2011 Vol. 365 No. 20
小児・若年成人における ADHD 薬と重篤な心血管イベント
ADHD Drugs and Serious Cardiovascular Events in Children and Young Adults
W.O. Cooper and Others
北米の有害事象報告から,注意欠如・多動性障害(ADHD)に対して薬剤を使用することで,重篤な心血管イベントのリスクが上昇するという懸念が生じている.
4 つの医療保険(テネシー州メディケイド,ワシントン州メディケイド,カリフォルニア州カイザーパーマネンテ,オプタムインサイト・エピデミオロジー)の自動化データを用いた後ろ向きコホート研究を行った.対象は 2~24 歳の小児・若年成人 1,200,438 例,追跡調査期間は 2,579,104 人年で,ADHD 薬を現在使用しているのは 373,667 人年であった.医療保険データと人口動態記録から重篤な心血管イベント(心臓突然死,急性心筋梗塞,脳卒中)を同定し,エンドポイントは診療録の再検討により確認した.Cox 回帰モデルによるハザード比を用いて,エンドポイントについて,現在使用者の非使用者に対する相対リスクを推定した.
コホートの構成者で重篤な心血管イベントは 81 件認められた(100,000 人年あたり 3.1 件).ADHD 薬の現在使用者では,重篤な心血管イベントのリスクは増加していなかった(補正ハザード比 0.75,95%信頼区間 [CI] 0.31~1.85).各エンドポイント項目に関するリスクや,過去使用者と比較した現在使用者におけるリスクは増加していなかった(補正ハザード比 0.70,95% CI 0.29~1.72).研究上のいくつかの仮定を置いた代替分析でも,ADHD 薬の使用と,研究で規定したエンドポイントのリスクとのあいだに有意な関連は認められなかった.
今回の大規模研究では,ADHD 薬の現在使用は重篤な心血管イベントのリスク上昇と関連しているという証拠は示されなかったが,95%信頼区間の上限値からはリスクが倍増する可能性が否定できないことが示された.しかし,このようなリスク上昇の絶対値の程度は低いと考えられる.(米国医療研究品質局,米国食品医薬品局から研究助成を受けた.)