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July 7, 2011 Vol. 365 No. 1

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急性非代償性心不全患者に対するネシリチドの効果
Effect of Nesiritide in Patients with Acute Decompensated Heart Failure

C.M. O'Connor and Others

背景

ネシリチド(nesiritide)は,米国では急性心不全患者における呼吸困難の早期緩和薬として承認されている.これまでに行われたメタアナリシスから,この薬剤に関連する腎毒性と死亡に疑問が投げかけられている.

方 法

急性心不全により入院した患者 7,141 例を,標準治療に加えてネシリチドを投与する群とプラセボを投与する群に無作為に割り付けた.投与は 24~168 時間行った.共通主要エンドポイントは,呼吸困難の 6 時間後,24 時間後の変化(7 段階のリッカート尺度により評価)と,30 日以内の心不全による再入院または死亡の複合エンドポイントとした.

結 果

ネシリチド群では,プラセボ群と比較して,呼吸困難の著明な改善または中程度の改善が報告される頻度が,6 時間後(44.5% 対 42.1%,P=0.03),24 時間後(68.2% 対 66.1%,P=0.007)とも高かったが,事前に規定した有意水準には達しなかった(両時点の評価について P≦0.005 またはいずれかの時点で P≦0.0025).30 日以内の心不全による再入院または全死因死亡の発生率は,ネシリチド群 9.4%であったのに対し,プラセボ群 10.1%であった(絶対差 -0.7 パーセントポイント,95%信頼区間 [CI] -2.1~0.7,P=0.31).30 日の時点での全死因死亡率(ネシリチド群 3.6% 対 プラセボ群 4.0%,絶対差 -0.4 パーセントポイント,95% CI -1.3~0.5),推定糸球体濾過量の低下が 25%を超えることと定義した腎機能悪化の発生率(31.4% 対 29.5%,オッズ比 1.09,95% CI 0.98~1.21,P=0.11)に,有意差は認められなかった.

結 論

ネシリチドは,死亡と再入院の発生率の上昇にも低下にも関連しておらず,他の治療法との併用による呼吸困難に対する効果は小さく有意ではなかった.腎機能の悪化との関連は認められなかったが,低血圧の発生率上昇との関連が認められた.これらの結果をふまえて,急性心不全の多様な患者集団にネシリチドをルーチンに使用することは推奨されない.(Scios 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00475852)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2011; 365 : 32 - 43. )