August 11, 2011 Vol. 365 No. 6
重症成人患者に対する静脈栄養の早期開始と待期開始との比較
Early versus Late Parenteral Nutrition in Critically Ill Adults
M.P. Casaer and Others
経腸栄養のみでは目標カロリーを達成できない重症成人患者に対する静脈栄養の開始時期については議論がある.
多施設共同無作為化試験において,集中治療室(ICU)の成人患者を対象に,不十分な経腸栄養を補うために行う静脈栄養を,早期開始(欧州のガイドライン)と待期開始(米国とカナダのガイドライン)で比較した.2,312 例は静脈栄養を ICU 入室後 48 時間以内に開始し(早期開始群),2,328 例は 8 日目まで開始しなかった(待期開始群).経腸栄養早期開始のプロトコールを両群で用い,正常血糖を達成するためインスリンを注入した.
待期開始群では,早期の ICU 生存退室率(ハザード比 1.06,95%信頼区間 [CI] 1.00~1.13,P=0.04)と生存退院率(ハザード比 1.06,95% CI 1.00~1.13,P=0.04)が 6.3%相対的に上昇し,退院時に機能状態の低下を示す所見は認められなかった.ICU 内死亡率,院内死亡率,90 日時点での生存率は,2 群で同程度であった.待期開始群では,早期開始群と比べて ICU 感染が少なく(22.8% 対 26.2%,P=0.008),胆汁うっ滞の発生率が低かった(P<0.001).待期開始群では,人工換気を 2 日を超えて必要とした患者の割合が 9.7%相対的に低下し(P=0.006),腎代替療法期間が中央値で 3 日短縮し(P=0.008),医療費が平均して 1,110 ユーロ(約 1,600 ドル)削減された(P=0.04).
静脈栄養の待期開始は,早期開始と比較してより速やかな回復と合併症の減少に関連していた.(ベルギー・フランダース政府のメトゥザレムプログラムほかから研究助成を受けた.EPaNIC ClinicalTrials.gov 番号:NCT00512122)