August 11, 2011 Vol. 365 No. 6
胸膜感染に対する組織プラスミノーゲン活性化因子と DNase の胸腔内投与
Intrapleural Use of Tissue Plasminogen Activator and DNase in Pleural Infection
N.M. Rahman and Others
胸膜感染患者の 30%以上は死亡するか,あるいは開胸手術を必要とする.治療の成功は感染体液のドレナージにかかっているが,先行する大規模無作為化試験では胸腔内線維素溶解療法によるドレナージの改善はみられなかった.
2×2 要因デザインの盲検試験において,胸膜感染患者 210 例を次の 4 通りの 3 日間の試験治療のいずれかに無作為に割り付けた:プラセボ+プラセボ投与,組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)+DNase の胸腔内投与,t-PA+プラセボ投与,DNase+プラセボ投与.主要転帰は,胸膜の不透過領域の変化とし,胸部 X 線像上の片側胸郭における胸水で満たされた領域の割合を 1 日目と 7 日目で比較し判定した.副次的転帰は,手術の紹介,入院期間,有害事象などとした.
胸膜の不透過領域の変化の平均値(±SD)は,t-PA+DNase 群のほうがプラセボ群よりも大きかった(-29.5±23.3% 対 -17.2±19.6%,差 -7.9%,95%信頼区間 [CI] -13.4~-2.4,P=0.005).t-PA 単独群と DNase 単独群における変化量(それぞれ-17.2±24.3%,-14.7±16.4%)は,プラセボ群における変化量と有意差はなかった.3 ヵ月の時点での手術の紹介の頻度は,t-PA+DNase 群のほうがプラセボ群よりも低かったが(48 例中 2 例 [4%] 対 51 例中 8 例 [16%],手術の紹介のオッズ比 0.17,95% CI 0.03~0.87,P=0.03),DNase 群(46 例中 18 例 [39%])ではプラセボ群よりも高かった(オッズ比 3.56,95% CI 1.30~9.75,P=0.01).t-PA+DNase 併用療法は,プラセボと比較して,入院期間の短縮と関連していた(差 -6.7 日,95% CI -12.0~-1.9,P=0.006).t-PA,DNase を単独で投与した場合の入院期間は,プラセボを投与した場合と有意差はなかった.有害事象の発生頻度に群間で有意差は認められなかった.
胸膜感染患者に対する t-PA+DNase 胸腔内投与により,ドレナージが改善し,手術の紹介の頻度が低下し,入院期間が短縮した.DNase 単独投与,t-PA 単独投与はいずれも無効であった.(Roche UK 社からオックスフォード大学への無制限の教育助成金ほかから研究助成を受けた.Current Controlled Trials 番号:ISRCTN57454527)