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January 19, 2012 Vol. 366 No. 3

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BRAF 阻害薬による治療を受けた患者の皮膚扁平上皮癌における RAS 変異
RAS Mutations in Cutaneous Squamous-Cell Carcinomas in Patients Treated with BRAF Inhibitors

F. Su and Others

背景

皮膚扁平上皮癌とケラトアカントーマは,BRAF 阻害薬による治療を受けた患者によくみられる所見である.

方 法

BRAF 阻害薬ベムラフェニブ(vemurafenib)による治療を受けた患者を対象に,発癌性変異(HRASKRASNRASCDKN2ATP53)の同定を目的として病変の分子解析を行った.独立した検証セットの解析を行い,頻度の高い RAS 変異についてその存在下での BRAF 阻害薬に関する機能的研究を行った.

結 果

21 腫瘍検体中 13 検体に RAS 変異(HRAS 変異 12 検体)が認められた.14 検体から成る検証では 8 検体に RAS 変異(HRAS 変異 4 検体)が認められた.したがって,標本の 60%(35 検体中 21 検体)に RAS 変異が存在し,もっとも頻度が高かったのは HRAS Q61L であった.ベムラフェニブに曝露された HRAS Q61L 変異細胞株の増殖亢進は,マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路のシグナル伝達と,ERK を介する転写の活性化に関連した.HRAS Q61L を介する皮膚発癌モデルマウスにおいて,ベムラフェニブアナログ PLX4720 は,発癌のイニシエーターでもプロモーターでもなかったが,HRAS 変異を有する病変の増殖を亢進させた.この増殖は MEK 阻害薬の同時投与によって阻害された.

結 論

ベムラフェニブによる治療を受けた患者に発生する皮膚扁平上皮癌とケラトアカントーマでは,RAS,とくに HRAS の変異が高頻度に認められる.その分子機構は,MAPK シグナル伝達の逆説的な活性化と一致しており,これらの病変の増殖亢進をもたらす.(Hoffmann–La Roche 社ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00405587,NCT00949702,NCT01001299,NCT01006980)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 366 : 207 - 15. )