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February 16, 2012 Vol. 366 No. 7

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卵巣癌における腫瘍随伴性血小板増加症
Paraneoplastic Thrombocytosis in Ovarian Cancer

R.L. Stone and Others

背景

卵巣癌における腫瘍随伴性血小板増加症の発症機序と,血小板が癌の増殖に果たす役割は明らかにされていない.

方 法

上皮性卵巣癌患者 619 例の臨床データを解析し,血小板数と癌の転帰との関連を検証した.上皮性卵巣癌のヒト検体とマウスモデルを用いて,腫瘍随伴性血小板増加症の発症機序を検討した.血小板が腫瘍増殖と血管新生に及ぼす影響を確認した.

結 果

血小板増加症は,疾患の進行と生存期間の短縮に有意に関連した.血小板増加症を有する患者では,有しない患者と比較して,トロンボポエチンとインターロイキン(IL)-6 の血漿中濃度が有意に上昇していた.マウスモデルでは,腫瘍由来 IL-6 に反応して生じる肝トロンボポエチンの合成が増加していることが,腫瘍随伴性血小板増加症の発症機序であった.腫瘍由来 IL-6 と肝トロンボポエチンは,患者の血小板増加症とも関連していた.担癌マウスでトロンボポエチンと IL-6 の発現を抑制すると,血小板増加症が抑制された.担癌マウスと上皮性卵巣癌患者に抗 IL-6 抗体を投与すると,血小板数が有意に減少した.さらに,上皮性卵巣癌のモデルマウスで IL-6 を中和すると,パクリタキセルの治療効果が有意に増強された.担癌マウスに血小板数を半減させるため抗血小板抗体を用いると,腫瘍増殖と血管新生が有意に減少した.

結 論

これらの結果から,パラクリン回路の存在が支持される.そこでは腫瘍と宿主組織における血小板新生サイトカインの産生が増加しており,腫瘍随伴性血小板増加症が引き起こされ,腫瘍増殖を刺激する.これらのサイトカインを標的にして直接的または間接的に腫瘍随伴性血小板増加症を抑制することが,治療法として可能性があると考えられる.(米国国立がん研究所ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 366 : 610 - 8. )