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July 19, 2012 Vol. 367 No. 3

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HIV-2 同時感染による HIV-1 感染症進行の抑制
Inhibition of HIV-1 Disease Progression by Contemporaneous HIV-2 Infection

J. Esbjörnsson and Others

背景

ヒト免疫不全ウイルス 1 型(HIV-1)未治療感染者の大半が進行性の免疫機能不全と後天性免疫不全症候群(AIDS)を発症するが,HIV 2 型(HIV-2)感染者で発症するのは約 20~30%にすぎず,両型の重複感染者における感染症進行の自然歴はほとんど明らかになっていない.

方 法

長期間(約 20 年)追跡を行うコホートに登録した後,HIV-1 に感染した被験者(HIV-1 単独感染または HIV-1・HIV-2 重複感染)223 例のデータを,最初に感染したのが HIV-2 かどうか,AIDS 発症までの期間,CD4+T 細胞数および CD8+T 細胞数,ウイルス進化の評価に基づいて分析した.

結 果

AIDS 発症までの期間の中央値は,重複感染者では 104 ヵ月(95%信頼区間 [CI] 75~133),HIV-1 単独感染者では 68 ヵ月(95% CI 60~76)であった(P=0.003).重複感染者のほうが CD4+T 細胞数が高く,また CD8+T 細胞の増加速度が遅かった.これは感染症の進行が遅かったことを表している.HIV-2 感染が HIV-1 感染に先行した重複感染者は AIDS 発症までの期間がもっとも長く,CD4+T 細胞数がもっとも高かった.感染後のほぼ同時点での HIV-1 の遺伝的多様性は,重複感染者のほうが HIV-1 単独感染者よりも有意に低かった.

結 論

今回の結果から,HIV-1 感染症の進行は HIV-2 との同時感染によって抑制されること,また重複感染は感染症の進行がより遅いことに関連することが示唆された.感染症進行の遅さは,HIV-2 感染が HIV-1 感染に先行した重複感染者でもっとも顕著であった.これらの知見は,HIV-1 のワクチンおよび治療法の開発に影響を及ぼす可能性がある.(スウェーデン国際開発協力庁-スウェーデン発展途上国調査協力庁ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 367 : 224 - 32. )