August 16, 2012 Vol. 367 No. 7
前立腺特異抗原スクリーニングによる QOL への影響
Quality-of-Life Effects of Prostate-Specific Antigen Screening
E.A.M. Heijnsdijk and Others
欧州前立腺癌スクリーニング無作為化試験(ERSPC)では,11 年間の追跡調査後,前立腺特異抗原(PSA)値のスクリーニングを受けた男性の前立腺癌死亡率が 29%低下したことが報告された.しかし,この利益が,過剰診断と治療に起因する QOL への悪影響によってどの程度相殺されるのかは明らかになっていない.
ERSPC の追跡調査データをもとに,マイクロシミュレーションスクリーニング解析(MISCAN)を用いて,PSA スクリーニング導入後の,前立腺癌数,治療数,死亡数,獲得質調整生存年(QALY)を予測した.スクリーニング法,有効性,QOL のさまざまな前提をモデル化した.
生涯追跡した全年齢層の男性 1,000 人あたりでは,55~69 歳時における年 1 回のスクリーニングで,前立腺癌死亡が 9 例減少し(28%減少),緩和医療を受ける男性が 14 例減少し(35%減少),生存年が計 73 年獲得される(回避された前立腺癌死亡 1 例あたり平均 8.4 年)と予測された.獲得 QALY は 56 年(-21~97 年)で,未補正の獲得生存年から 23%減少した.前立腺癌死亡 1 例を予防するには,98 人がスクリーニングを受け,5 個の癌が発見される必要がある.55~74 歳の男性全員にスクリーニングを行えば,獲得生存年は増えるが(82 年),獲得 QALY は同等である(56 年).
PSA スクリーニングの利益は,診断後の長期的な影響に起因する QALY の減少によって小さくなった.スクリーニングについて全般的な勧告を行うには,ERSPC と QOL 解析の両方の,より長期の追跡調査データが不可欠である.(オランダ健康研究開発機構ほかから研究助成を受けた.)