August 16, 2012 Vol. 367 No. 7
慢性腎臓病を有する心房細動患者における脳卒中と出血
Stroke and Bleeding in Atrial Fibrillation with Chronic Kidney Disease
J.B. Olesen and Others
心房細動と慢性腎臓病はいずれも脳卒中と全身性血栓塞栓症のリスクを上昇させる.しかし,これらのリスクや,抗血栓治療の有効性は,両疾患を有する患者において十分に検討されていない.
デンマークの全国登録を用いて,1997~2008 年に非弁膜性心房細動の診断を受け,病院から退院した患者全例を同定した.非末期慢性腎臓病,末期慢性腎臓病(すなわち腎代替療法を必要とする)それぞれに関連する脳卒中または全身性血栓塞栓症と出血のリスクを,時間依存性 Cox 回帰分析を用いて推定した.さらに慢性腎臓病患者におけるワルファリン,アスピリン,またはその両方を用いた治療の効果を,腎疾患を有しない患者における効果と比較した.
解析対象となった 132,372 例のうち,組入れ時点において,3,587 例(2.7%)が非末期慢性腎臓病であり,901 例(0.7%)が腎代替療法を必要としていた.腎疾患を有しない患者と比較して,非末期慢性腎臓病患者は脳卒中または全身性血栓塞栓症のリスクが高く(ハザード比 1.49,95%信頼区間 [CI] 1.38~1.59,P<0.001),腎代替療法が必要な患者でも同様であった(ハザード比 1.83,95% CI 1.57~2.14,P<0.001).このリスクはワルファリンを使用したどちらの患者群でも有意に低下したが,アスピリン群では低下しなかった.出血のリスクも,非末期慢性腎臓病患者,腎代替療法が必要な患者で高く,ワルファリン,アスピリン,またはその両方を使用するとさらに高くなった.
心房細動患者において,慢性腎臓病は,脳卒中または全身性血栓塞栓症のリスクと,出血のリスクの上昇に関連していた.ワルファリン療法は慢性腎臓病患者の脳卒中または全身性血栓塞栓症のリスク低下と関連したが,ワルファリンとアスピリンは出血のリスク上昇と関連していた.(ルンドベック財団から研究助成を受けた.)