September 13, 2012 Vol. 367 No. 11
安定冠動脈疾患における冠血流予備量比を指標とする経皮的冠動脈インターベンションと内科的治療との比較
Fractional Flow Reserve–Guided PCI versus Medical Therapy in Stable Coronary Disease
B. De Bruyne and Others
安定冠動脈疾患患者の望ましい初期治療は,利用可能な最善の内科的治療である.われわれは,冠血流予備量比(FFR)測定により,機能的に有意な狭窄を有すると判定された患者において,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と利用可能な最善の内科的治療との併用は,利用可能な最善の内科的治療単独に対し優越性を示すという仮説を立てた.
PCI が検討されている安定冠動脈疾患患者において,FFR 測定によりすべての狭窄を評価した.1 つ以上の狭窄が機能的に有意(FFR≦0.80)であった患者を,FFR を指標とする PCI と利用可能な最善の内科的治療を併用する群(PCI 群)と,利用可能な最善の内科的治療を単独で行う群(内科的治療群)に無作為に割り付けた.すべての狭窄の FFR が 0.80 を超えていた患者は,登録して利用可能な最善の内科的治療を行った.主要エンドポイントは,死亡,心筋梗塞,緊急の血行再建術の複合とした.
1,220 例(無作為化 888 例,登録 332 例)を組み入れた時点で,主要エンドポイントのイベント発生率は PCI 群 4.3%,内科的治療群 12.7%と,群間で有意差が認められたため募集は早期に中止された(PCI のハザード比 0.32;95%信頼区間 [CI] 0.19~0.53;P<0.001).この差は,PCI 群における緊急血行再建術施行率が内科的治療群よりも低いこと(1.6% 対 11.1%;ハザード比 0.13;95% CI 0.06~0.30;P<0.001)によるもので,とくに,PCI 群では心筋梗塞や心電図での虚血所見に対して施行された緊急血行再建術が少なかった(ハザード比 0.13;95% CI 0.04~0.43;P<0.001).登録した患者では,3.0%に主要エンドポイントのイベントが発生した.
安定冠動脈疾患と機能的に有意な狭窄を有する患者において,FFR を指標とする PCI と利用可能な最善の内科的治療との併用により,利用可能な最善の内科的治療単独と比較して,緊急血行再建術の必要性が減少した.虚血を有しない患者では,利用可能な最善の内科的治療単独のほうが良好な転帰が得られると考えられる.(St. Jude Medical 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT01132495)